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(2) ボランティアコーディネーターの油回収専門知識・技術等の欠如問題

ナホトカ号事故においては、地方公共団体(地方公共団体が設立した専門機関等を含む)、社会福祉協議会、青年会議所、民間のボランティア団体等、あるいはそれらの複合組織によるコーディネートのもと、「個人ボランティア」及び「団体ボランティア」が「組織型ボランティア」として一体化した上で、災害ボランティア活動が営まれた事例が見受けられた。

ナホトカ号事故は、災害ボランティア活動の円滑かつ効果的な実施のためには、こうしたボランティアコーディネーターの側面・後方支援に基づくボランティアの組織化が必要不可欠な要素であることを証明した一つの事例であったとも言える。

ところで、これら災害ボランティア活動におけるボランティアコーディネーターに関し、その具備すべき要件について考察を行った場合、前述の「専門職ボランティア」の不在問題と同様、石油類の取り扱いや油回収等に関する専門の知識、技術、経験等を有する者がいないことも検討課題の一つとなるのではなかろうか。

すなわち、ナホトカ号事故においては、1]緊急時における行政のボランティア対応窓口、2]主として社会福祉活動に係るボランティアコーディネートの専門機関、3]阪神・淡路大震災を通じボランティアコーディネートに関する経験を有する民間ボランティア団体等が中心となって、災害ボランティア活動に対するボランティアコーディネートが行われていた。

しかしながら、いずれの組織もボランティアコーディネートに関しては専門ではあるが、石油類の取り扱いや油回収等に関する専門の知識、技術、経験等は一切持っていなかったものと推測される。

ボランティアコーディネーターがこのような専門知識等を欠落している中で、果たして他の油種や状況下においても、安全かつ円滑なボランティアコーディネートが実施できるものであろうか。

この問題も今後の災害ボランティア活動のあり方を考えていく上で、重要な検討課題の一つであるものと思われる。以下に、その解決方法について考察を行ってみた。

1] 油回収専門知識・技術等の移転

第一に考えられるのが、ボランティアコーディネートを専門とする者を対象に、海防センターに代表される専門機関において、石油類の取り扱いや油回収等に関する専門の知識、技術等に関する教育・訓練を施すという手法である。

ところで、現在海防センターでは、地方公共団体の職員等を対象に、洋上及び海岸漂着油対応に関する知識の習得等を目的とした教育・訓練を行っている。

 

 

 

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