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(2) 所在区分に関する判定

前節では災害救援活動におけるボランティア属性をボランティアの「所在」という視点から、「被災地内ボランティア」及び「被災地外ボランティア」の二つに分類した。

ところで、ナホトカ号事故の際には、高齢者を含めた地元住民や地元漁業者が積極的な油防除作業に携わった。これは正に被害者が自身の生活環境や生活の糧である漁場を自分達の手で守ろうとする気持ちの現われであり、ある意味ではボランティア精神とあい通じるものがある。しかしながら、本調査は当該活動を災害ボランティア活動とは一線を画すこととする。

現に国家緊急時計画においても、海岸漂着油の除去措置の実施に関し、第3章「油汚染事件に対する対応に関する基本的事項」、第5節「油防除対策の実施」の4項において、「…必要な措置を地元住民、ボランティア等の協力を得て実施する機関は…」という記述が見られ、地元住民等による活動とボランティアによる活動とは表現上区別されている。

こうしたことから、災害ボランティア活動における「被災地内ボランティア」とは、被災地と同じ都道府県内から被災地に集まり活動を行ったボランティアであって、かつ、地元住民、漁業者等以外の者のことを指し、また「被災地外ボランティア」とは、被災地外の都道府県から被災地に集まり活動を行ったボランティアのことを指すものと解すことが適切であろう。

ナホトカ号事故をもとに実例を挙げると、「三国方式」におけるボランティアコーディネートは、「三国社協」や「MAKJC」などの「被災地内ボランティア」が行政(三国町)との連携のもと、阪神・淡路大震災を経験したボランティア団体などの「被災地外ボランティア」の協力を得て実施したものであったと言える。

また、このようなコーディネートを受けたボランティアは「被災地内ボランティア」と「被災地外ボランティア」とが混在していた。すなわち、33%が福井県内から集まった「被災地内ボランティア」であり、残り67%が他の都道府県から集まった「被災地外ボランティア」であった。

彼らは三国町周辺エリアに居住する地元住民や漁業者とともに、あるいはそのニーズに応え、災害ボランティア活動に従事したものであった。

一方、福井県庁における「福井県災害時ボランティア制度」に基づく対応や、石川県庁における「県民ボランティアセンター」を核とした対応は、「被災地内ボランティア」を中心とした災害ボランティア活動が、行政主体によるボランティアコーディネートのもと実施されたケースであったと言える。

 

 

 

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