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4.3 福井県三国町の場合

 

平成9年1月7日午後2時頃、福井県三国町安島海岸の沖合約200メートルの浅瀬に、同年1月2日未明に隠岐島沖で折損し半没状態で漂流を続けていたナホトカ号の船首部分が、推定約2,800klの重油を残存したままの状態で座礁した。三国町では、安島を中心とした付近一帯の海岸が、約10kmにわたり漂着した重油によって汚染された。

三国町におけるこうしたナホトカ号船首部分漂着の模様及び重油によって汚染された海岸の状況、並びに関係行政機関、地元住民、漁業者等による懸命の油回収活動の模様は、マスメディアによって全国に向けて繰り返し報道された。その結果、日本各地から延べ約7万4,000人(非登録者等を含む推計値。三国町が把握している「三国ボランティア本部」への登録者は延べ3万6,195人であった。)にのぼるボランティアが油回収活動への参加を希望して現地に集まった。

三国町では、こうした大規模な災害ボランティア活動に対応するため、公・民連携のもと、ボランティアに対する受け入れ側の調整策として、通称「三国方式」と呼ばれる独自のシステムを構築した。本節ではその実態について取りまとめた。

(1) 阪神・淡路大震災を経験したボランティア団体による初期対応

阪神・淡路大震災における災害救援活動で活躍したボランティア団体「神戸元気村(以下、元気村と呼ぶ。)」のメンバーは、三国町安島海岸にナホトカ船首部が漂着した翌日の1月8日の朝、地元住民や漁業者によって既に開始されていた柄杓による汲み取りやバケツリレー等を主体としたマンパワーによる油回収活動に参加した。

その結果、同日午後には「人海戦術は効果的ではあるが、地元住民等のマンパワーには限界がある。また、マスコミ報道等を情報源としたボランティアが大挙して当地を訪れ、当該活動に参加することも容易に予想される。そのような場合に備え、一元的な情報発信や交通整理的な機能等、民間支援によるボランティア受入れ体制の整備を図ることが必要である」と判断、元気村事務局を通じ関係団体に協力を要請した。

同じく阪神・淡路大震災における災害救援活動で活躍したボランティア団体「日本災害救援ボランティアネットワーク(以下、NVNADと呼ぶ。)」はこの要請を受け、ただちに担当者を現地に派遣した。

翌1月9日午前、元気村及びNVNADのメンバーは、三国町長を本部長とする「ロシアタンカー重油流出事故災害対策本部(以下、三国町対策本部と呼ぶ。)」に対し、県外からのボランティアの受け入れについて相談したところ、「現時点ではボランティアの登録のみを受け、実際の活動は状況を見て要請する」との回答を得た。

 

 

 

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