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第4章 「ナホトカ号事故と災害ボランティア活動」

 

「ボランティア」の語源は、ラテン語で「意志」を意味する「volo(ウォロ)」、または「自由意志」を意味する「voluntas(ウォランタス)」に始まると言われている。

これらはフランス語では「volonte(ボランテ)」、またドイツ語では「volontar(ボランタル)」に転じ、いずれも「志願兵」あるいは「義勇兵」の意味として使われてきた。

一方、英語では「volunteer(ボランティア)」に転じ、仏語及び独語と同様に「志願兵」などを意味する語句として使われてきたが、19世紀末、米国において社会福祉活動を目的とした「Volunteer of America(アメリカ篤志団)」という民間組織が結成されたことを契機に、「自らの意思による見返りを期待しない社会奉仕活動」のことも意味するようになった。

「ボランティア活動推進国際協議会(IAVE)」では、「ボランティア活動とは、各個人が自発的に決意・選択するものであり、人間の持っている潜在能力及び日常生活の質を向上し、人間相互の連帯感を高める活動である」と位置付けた上で、その特質は1]自発性(自立性)、2]無償性(非営利性)、3]公共性(公益性)、3]先駆性(社会開発性)であるとしている。

我が国は従来、諸外国と比べ、ボランティアが育たない土壌であると言われてきた。しかしながら、平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災の際には、延べ142万人にも及ぶボランティアが全国から集まり積極的な活動を行い、このような定説は見事に覆された。ところが、震災も復興期に入るとボランティア活動は次第に下火となっていった。世間の記憶からも薄れかけていた矢先、日本海においてナホトカ号による重油流出事故が発生した。

テレビや新聞をはじめとするマスメディアは、大量の重油によって汚染された海岸や油まみれとなって油回収活動を行う地元住民、漁業者等の様子を全国に向け繰り返し報道した。その結果、一説によれば延べ77万人(非登録者等を含む推計値による。各地方公共団体が把握している登録者の集計によれば、延べ27万4,607人であったという。)にのぼるボランティアが各被災地に集まり、大規模な災害ボランティア活動(本調査では、流出油災害における一般市民等による無償の油回収活動のことをいう。)を展開するに至った。

阪神・淡路大震災で培われたボランティアによる災害救援活動制度が、ナホトカ号事故によって我が国においても本格的に定着したと言われている。

本章では、今後、本調査において災害ボランティア活動に関する具体的な検討を進める上での参考とするため、ナホトカ号事故における当該活動全般の概要及び個別活動例のいくつかについて取りまとめた。

 

 

 

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