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しかしながら、防除活動全般の所管部門である海事局船舶監督所では、主として安全・健康面の観点から、ボランティアの参加人数及び参加者の年齢を抑制するとともに、油そのものを直接回収する現場作業ではなく、後方支援活動への参加を指導する施策を進めてきた。

ここで中国の災害ボランティア活動に伴う防除体制の現状についても若干触れておきたい。

中国では現在、韓国と同様、OPRC条約の早期批准に向け、国内における油防除対応能力の強化と油汚染事故に関する国家緊急時計画の策定作業を着々と進めている。これに先駆け中国では、1992年から1994年にかけて、世界銀行による環境保護基金をもとに、中国交通科学研究院及び米国海洋大気庁(the National Oceanic and Atmospheric Administration:略称NOAA)の共同作業により、中国六大港(大連、天津、上海、寧波、厦門及び広州の各港)における油汚染事故に対する地区緊急時計画(Area Contingency Plan:略称ACP)を策定してきた。また、その他の港に共通して使用可能な地区緊急時計画(ACP)の標準フォームも併せて策定してきた。

これら地区緊急時計画(ACP)の特徴の一つとして、各港の港長に相当する公務員である港務監督に対し、防除活動の指揮から事故後の賠償金の調停に至るまでの、事故全般に関わる極めて絶大な権限を集約させたことが挙げられる。

米国海洋大気庁の支援により策定されたこの計画は、まさに米国の連邦現場統制指揮官(FOSC)制度を彷彿させるものであると言えよう。したがって、災害ボランティア活動に対しても、各港の港務監督による大きな指揮・管理権が及ぶこととなる。

(3) 中国における災害ボランティア活動

前項で述べたとおり、中国においては、比較的規模の大きな流出油災害の発生に際して、一般市民等による無償の油回収活動、すなわち災害ボランティア活動がたびたび行われてきた。

法律による明確な活動制限までは行われていないものの、基本的に中国政府は、災害ボランティア活動を積極的に奨励していない。したがって、地区緊急時計画(ACP)に基づき、防除活動全般を指揮・監督する立場にある港務監督は、当該活動そのものを否定するものではなく、ボランティア達の社会貢献に対する精神を十分に尊重した上で、安全・健康面での問題及び当該作業は専門性を有するべきであるとの観点から、彼らに対し後方支援活動に従事するよう指導するのが慣例となっているという。

しかしながら、この指導は一般成人を対象としたものであり、未成年者に対する対応はこれとは異なる。すなわち、中国政府は中華人民共和国未成年人保護法の規程に基づき、後方支援活動を含め、危険性及び専門性を伴う災害ボランティア活動に未成年者が従事することを一切禁止している。具体的には、各港務監督が法の遵守に向けた対応を適宜図ることとなる。

 

 

 

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