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OSHA基準は、専門家のみならず、ボランティアを含め実際に災害現場において油防除活動に従事するすべての者に対し、連邦現場統制指揮官(FOSC)監督のもと、厳格に適用される安全基準である。OSHA基準では、特に災害現場の最前線で防除活動にあたる要員に対し、保護具等の安全装備着用等のほか、レベルに応じ4時間から40時間に及ぶ研修・訓練への参加などを厳格に義務付けている。

防除活動全般に関する絶大な権限を有する連邦現場統制指揮官(FOSC)は、例えそれが善意の第三者である一般市民のボランティアであったとしても、OSHA基準に満たない技術・知識・装備等を有する要員の使用は、連邦規則に従い一切できない仕組みとなっている。

このように厳格なOSHA基準を、自らの努力と責任のもとで克服可能なボランティアは事実上ほとんど存在しない。こうしたことから、可能性としては残されてはいるものの、地区緊急時計画(ACP)の中に、直接油を回収するなど、いわゆる現場防除作業に従事するボランティアに関する記述が含まれることは極めて希なケースとなる。

(4) 米国における災害ボランティア活動

米国においては、ボランティアが現場において油回収活動そのものに直接参加する事例は、前項で述べた理由により、現状、ほとんど見られることはない。

ところで、OSHA基準に従い、特に厳格な健康・安全面での規制を受ける要員は、災害現場において直接油防除活動に従事する者達である。一方、後方支援活動に関しては、直接油防除を行う活動と比べ、比較的OSHA基準による規制内容が緩やかとなっている。

そのため、米国における災害ボランティア活動は、通常、事務・記録作業や物資の運搬など、現場作業員に対する後方支援活動が主体となっており、これらボランティアによる後方支援活動が行われることを前提にあらかじめ策定された地区緊急時計画(ACP)が存在することも事実である。

しかしながら、後方支援活動といえども、OSHA基準に則った連邦現場統制指揮官(FOSC)による厳重な指揮・管理下に置かれたうえでの活動となり、かつ、平時においては、地区緊急時計画(ACP)の定めるところにより、所要の研修・訓練への参加が義務付けられることとなっている。

 

 

 

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