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ところで地区緊急時計画(ACP)は、OPA90の定めるところにより、各地区ごとに地区委員会が設立され、当該地区を担当する連邦現場統制指揮官(FOSC)の監督のもとに策定作業が行われる。また、策定後にあっては、必要に応じて改善が施されていく仕組みとなっている。

ボランティア活動に関して言えば、地区緊急時計画(ACP)の中に、当該計画の実施に必要なボランティア人材を平時からいかに組織し、有事にあってはいかに彼らを有効に、かつ安全に活用するかについての手順を記載することとなっている。

通常、地区緊急時計画(ACP)に含まれるボランティア人材とは、国家緊急時計画(NCP)の三大原則の一つである、野生動物を含め、環境に与える影響を最小限に抑えるための効果的、かつ時宜を得た対応を行うに当たって必要なボランティア人材、すなわち、野生動物の救護・保全活動等に関するボランティアのことを指す。

(3) 防除現場における米国職業安全衛生管理局(OSHA)基準

前述のとおり、連邦現場統制指揮官(FOSC)監督のもとに策定される地区緊急時計画(ACP)に踏まえられるボランティア人材とは、通常、野生動物の救護・保全活動に関するボランティアである。

ところで、本調査が対象としている災害ボランティア活動(流出油災害における一般市民等による無償の油回収活動のこと)に関し、その活動の是非を言及した法律は米国には存在しない。

したがって、連邦現場統制指揮官(FOSC)の判断に基づき、地区緊急時計画(ACP)実施のために必要であるならば、同計画の中に災害ボランティア活動に関する記述を加え、有事に祭し積極的に活用することも制度上は可能である。

しかしながら、実際そのようなケースは、以下の理由によりあまり見られないという。以下にその理由を述べる。

前述のとおり、国家緊急時計画(NCP)では、三大原則の一つとして、いかなる場合においても人命の安全を最優先としている。

したがって、連邦現場統制指揮官(FOSC)は、流出油災害現場における防除活動の指揮・作業員の管理に当たり、当然のことながら、当該原則の徹底遵守を図る。具体的には、連邦規則集タイトル29(Code of Federal Regulation、以下CFR29と呼ぶ。)第1910章、第120項に定められた、「危険な廃棄物の取り扱い及び緊急時対応に関する職業安全衛生管理局基準(The Occupational Safety and Health Administration Standards for hazardous waste operations and emergency response、以下OSHA基準と呼ぶ。巻末の「参考資料3」を参照)」に則った、人命の安全を最優先とした指揮・管理が行われることとなる。

 

 

 

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