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連邦現場統制指揮官(FOSC)とは、米国沿岸警備隊に所属する公務員であり、全米48個所に指定された沿岸エリアの各1個所づつを、各1名の隊員が担当することとなっている。OPA90の制定に伴い、連邦現場統制指揮官(FOSC)は各々の担当エリアにおいて、油汚染事故に係る地区緊急時計画策定に関する監督権を持つとともに、事故に際しては連邦政府及び州政府との調整を行うほか防除全般の指揮権を有し、さらには防除費用に係る信託基金へのアクセス権を持つこととなった。

すなわち、OPA90によって、連邦現場統制指揮官(FOSC)に対しては、計画策定段階から事故処理に至る、油防除対応全般に関する極めて絶大な権限が集約されることとなった。

(2) 連邦現場統制指揮官(FOSC)と地区緊急時計画(ACP)

米国においても我が国と同様、油汚染事故に係る国家緊急時計画(National Contingency Plan、以下NCPと呼ぶ。)が定められている。国家緊急時計画(NCP)は連邦政府規則であり、OPA90の大部分はこの計画に基づいて履行されることとなる。

国家緊急時計画(NCP)には、米国の油防除対応に関する三大原則が明記されている。すなわち、1]いかなる対応においても人命の安全を最優先すること、2]事故の状況がそれ以上悪化することがないよう適切な手段を講じること、3]野生動物を含め、環境に与える影響を最小限に抑えるための効果的、かつ時宜を得た対応を行うに当たって必要なあらゆる抑止手段・除去措置を駆使すること、以上の三つである。

米国の油汚染事故に係る緊急時計画は、国家緊急時計画(NCP)を頂点として、各州政府レベルの地域緊急時計画(Regional Contingency Plan、以下RCPと呼ぶ。)及びその下の地区レベルの地区緊急時計画(Area Contingency Plan、以下ACPと呼ぶ。)の三段階によって構成されている。

地域緊急時計画(RCP)及び地区緊急時計画(ACP)には、いずれも前述の国家緊急時計画(NCP)における三大原則が取り入れられている。また、NCP、RCP及びACP、三段階各々の緊急時計画の共通点としては、三大原則に関する部分のほか、1]最悪の事故に対応できる計画であること、2]使用可能なあらゆる要員と資機材の確保について触れられていること、3]責任の分担が明確にされていること、4]他の段階の緊急時計画との連携が明確にされていること、以上の四つが挙げられる。

 

 

 

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