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ところで、海岸漂着油の除去・防除活動に関する一義的な義務は、海防法が定めるところにより、まずはその原因者にある。しかしながら、大規模な油流出事故においては、原因者の活動のみでは十分な対応ができないことが十分に予想される。

事実、ナホトカ号事故の際には、地域住民の人命・財産への被害の局限化や生活環境の保全の観点から地方公共団体が、また港湾、漁港、海岸及び河川の管理区域・施設の機能保全の観点から各区域管理者が、それぞれ海上保安庁等の関係先から情報を入手し、または連絡調整を行いながら、災害派遣された自衛隊員や地元住民、ボランティア等の協力を得て原因者に代わり当該活動を行っている。

しかしながら、改訂前の国家緊急時計画では、海岸漂着油に除去等に関する行政側の対応についての記述がなかったため、各々の機関の果たすべき役割が不明確な状態にあった。

こうしたことから、ナホトカ号事故の実態を踏まえ、改訂国家緊急時計画において本項目が加えられたものである。そして、併せて油流出事故における災害ボランティア活動の関わりが、初めてここに明記されることとなった。

ところで、ナホトカ号事故の際、一部の防除専門家、海事関係者等から、参加する一般市民等の健康及び安全面での問題を危惧するあまり、災害ボランティア活動そのものの是非を問う意見も出された。しかしながら、改訂国家緊急時計画では、海岸漂着油の除去に関しては、関係行政機関、地方公共団体及び区域管理者が、健康管理のための体制整備及び円滑な防除作業実施に必要な支援体制整備に努めることを条件に、ボランティア等の協力を得て必要な措置を実施できる可能性について明言している。

これら協力を得る側等によって、今後、体制の整備が具体的に進められ、国家緊急時計画の主旨に則った準備及び対応の適切な実施が図られるに当たり、あらかじめ、災害ボランティア活動に関する検討課題の整理及びその解決方法に関する考察を行っておくことは必要不可欠であり、本調査実施の主旨は正にそこにあると言える。

(4) 防災基本計画海上災害対策編

防災基本計画は、災害対策基本法に基づき、中央防災会議が作成する我が国の防災に関する基本的な計画である。災害対策基本法では、防災計画としてこの防災基本計画のほか、指定行政機関及び指定公共機関が作成する防災業務計画、都道府県防災会議が作成する都道府県地域防災計画、市町村防災会議が作成する市町村地域防災計画について定めがあるが、これらはいずれも防災基本計画に基づき作成することとなっている。

 

 

 

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