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5. 伊良湖水道付近海域の特性と現状の問題点

 

伊良湖水道は伊勢湾口の伊良湖岬と神島との間にある水道で、外海から伊勢湾および三河湾に入る最良の水道である。同水道内の東側には、朝日礁、西側にはコズカミ礁などがあり、ほぼ中央部に海上交通安全法により定められた伊良湖水道航路がある。

年間を通して北西の風が卓越しており、10m/s以上の強風の出現率は冬期に約34%と高く、その 風向は西北西、北西が多い。潮流は北西・南東へ流れ、最強流は南東流2.7ノット、北西流2.1ノットである。

霧は春に多く発生し、視界1海里以下になることもある。また、数メートルのうねりが南方から来ることがあり、船舶の運航には厳しい海域である。

伊良湖水道は1日約1,000隻、伊良湖水道航路は1日約300隻の船舶が航行しており、特に他の海上交通安全法の狭水道に比べ、漁船の航行および操業が多い海域である。また、管制船舶の通航も多く、巨大船の通航割合が多いのが特徴である。伊良湖水道航路を航行する船舶は03時〜06時に北航、17時〜20時に南航のピークがある。

平成5年〜9年の伊良湖水道付近における衝突および乗揚げ海難は、5年間で要救助海難が9隻、不要救助海難が22隻、合計31隻発生しており、約9割が衝突である。海難原因として見張り不十分、操船不適切が多い。

また、伊良湖水道航路においては「2. 伊良湖水道航路の航行管制等の現状」に述べた航行管制が 行われており、現状の航行管制および航行環境について下記の1]〜5]が指摘されている。

1] 朝夕のラッシュ時等巨大船が集中する場合、巨大船に対して相当の航路入航予定時刻の変更を 指示することがある。

2] 巨大船が連続して航行する場合、待機する準巨大船(長さ130m以上200m未満の船舶の通称、以下同じ)が航路入口付近で集中することがある。

3] 準巨大船に対する管制信号の開始は、巨大船の実際の運航時間ではなく、タイムスケジュールに 沿って入航予定時刻の20分前から実施しているため、場合によっては入航可能な準巨大船を 待機させることがある。

4] 巨大船が反航する場合、航路入航予定時刻は45分間隔で指示されているが、航路入航時間間隔を短縮することが可能な場合がある。

5] 伊良湖水道航路内で遊漁船、一本釣り漁船等が、巨大船等が航路に入航していても操業を継続 していることがある。

伊良湖水道付近海域は以上のような特性があり、自然環境が厳しく、海上交通が輻輳する海域である。

 

 

 

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