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バルカー、鉱石運搬船、タンカー、液化ガス運搬船、鉱油兼用船等の船種では、特に貨物を積載していない航海では大量のバラスト水が必要となる。

コンテナ船、フェリー、在来貨物船、客船、ロールオン/オフフェリー、漁船、軍艦等その他の船種では、ほとんどどんな積載条件下でも、復原性、トリム及びヒールの調整のため、これより少量のバラスト水が必要となる。

世界中で毎年約100億トンのバラスト水が移動すると推定されている。各船舶はその大きさや貨種により、数百リットルから10万トンを超える量のバラスト水を運ぶ。バラスト水は揚荷港内又はその付近でバラストタンクに漲水されるが、これにはおそらくあらゆる生存段階にある水生生物が含まれていると思われる。世界中で1日当たり3,000種の動植物が、バラスト水により輸送されているものと推定されている。

生物種は、たとえば塩分濃度や温度といった面で漲/排水両域の環境が似通っている場合により地歩を築きやすいことから、排出後の種の生存率は受入水域の条件に依存する。

諸研究によれば、放出された種のうち実際に新地域内に定着するものは通常3%未満とされているが、一方で肉食魚ただ一尾の放出が、放出地方の生態系に甚大な被害を及ぼし得るともされている。

ここ10年間IMOは、加盟各国と共にこの問題に取り組んでいる。IMOはまず、船舶バラスト水・沈殿物排出による好ましくない生物・病原体侵入防止のためのガイドラインを1991年に採択し、目下バラスト水管理強制規則の採択に向けて作業中である。

海運は、世界中の商品・産物の90%以上を輸送しており、世界貿易の重要な要素である。船舶のバラスティングは、空船又は軽荷で貨物積載に向かう航海時における船舶の安全運航のために必要な要件であり、現在のところ、異国港における放出防止こそが好ましくない種の拡散を抑制するための唯一の効果的方法である。

 

初期の侵入者

 

鋼鉄製の船体が導入されて船が海水をバラストとして利用し始めた19世紀後半以前には、砂、石、レンガ、さらには鉄でさえもバラストとして利用されていた。

バラストは元来有害なものではなかった。しかしながら、、船舶のバラストとして遠方の港で何千トンもの海水を漲水されるようになると、現地の生命体が無意識にすくい上げられ、大洋を越えて新たな場所に輸送されるようになった。船舶の高速化もおそらくそれら現地種の輸送中の生存率向上に寄与しており、それら現地種の天敵がいない新たな海域では、定着できる状況となる。

科学者たちは、1903年の北海におけるアジア産植物性プランクトン藻類Odontella(Biddulphia sinensis)が集団発生した後に初めて異国種侵入の兆候を認識した。

しかしこの問題について詳細な再調査が開始されたのは1970年代である。

当時、特に、IMOでの船舶による油汚染に係る規則起案作業への刺激剤となった1967年の油タンカーTorrey Canyon号の災害以降、船舶による海洋環境汚染の潜在的危険性が地球規模の問題になっていた。

 

 

 

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