一般的には、向かい波よりは追い波の方が船の揺れも穏やかですが、それも波の大きさと船の大きさによっては危険な状況となることがあります。比較的小型の船舶では、ブローチングによりアッという間に転覆する事例が時折みられます。
1 追い波の危険
(1) プープダウン(Pooping down)
船尾からの追い波の打ち込みをいいます。船体や舵などの船尾構造の耐波性も悪く、また船尾居住区の扉などを破ることもあるので、非常に危険な現象です。
(2) ブローチング(broachig to)
船が追い波で航走するときは、船と波との相対速度が小さいため船尾が波の谷または傾斜前面に入ったときに、急激なヨーイング(yawing、船首揺れ)をして船体が波間に横たわることがあり、これをブローチングといいます。
船がブローチングを起こしたときに、突然他の傾斜モーメントが重なると、大きく傾斜して復原モーメントを失い転覆してしまいます。
2 追い波時の航法
1] スカッディング(scudding、順走)は、波浪を斜め船尾方向に受けながら航走する方式です。台風中心から脱出するような場合に向いています。なお、ブローチングやプープダウンに十分注意する必要があります。
2] 針路を少し変え、また速力を落とす。
3] 操舵は小刻みに行い、船首揺れに対しては慎重に対処する。
4] 特に小型船の場合には舵機、舵への衝撃の緩和に注意する。