日本財団 図書館


この人と

 

002-1.gif

共同船舶株式会社 代表取締役社長

小川洋(おがわひろし)

 

<プロフィル>

昭和十二年生まれ、東京都出身、三十六年東京都立大学法学部卒業、極洋捕鯨株式会社(現在(株)極洋)入社、漁労部勤務、海外事業部勤務(この間、外地勤務九年)、社長室次長、開発事業部長、平成六年一月(株)極洋退社、共同船舶株式会社取締役就任、九年一月常務取締役、十一年一月から現職

 

―― 気象の急変する南氷洋海域で鯨類調査船が心がけていることは ?

小川 気象の急変を事前に正確に把握することが大切ですが、この海域の予報は少なく船団独自で気象衛星等からデーターを受け判断しなければなりません。赤道を越えると暴風圏を含め時化が非常に多い海域なので、船の復元力チェック、船内可動物の固縛、水密扉の点検整備等万全な荒天準備を行っています。

―― 氷山に対する対策は ?

小川 大きな氷山はレーダーで捕捉できますが、波間に浮き沈みする小さな氷山は人の目で発見するしかありません。幸い目のよい乗組員が揃っていますが、特に夜間の航行では緊張を強いられ、風向・波向・海流等総合的なワッチが必要です。三月に入ると「蓮の葉状」の氷が海面を覆い始め、ペラや舵が損傷する恐れも出てきます。

また、船体への着氷も危険で、時化の後は総員で氷落としを行います。

―― グリーンピースの妨害が船舶の安全上問題があるやに聞いていますが。

小川 グリーンピースの妨害は、過去いろいろな形で何度も受けていますが、今年は特に悪質かつ執拗な妨害を十二月二十日から一月十七日にわたって受けました。十二月二十一日には航行の自由が取れない日新丸に警告を無視して異常接近したアークティック・サンラインズ号が接触する事故も発生しました。幸い双方に怪我人は出ませんでしたが、一つ間違うと大事故になりかねないものでした。彼らは活動船にヘリコプターを搭載、高速エンジンを搭載した最新鋭の大型ゴムボートを使用して調査母船日新丸に対して後部スリップウエーに突入して侵入を企てたり、安全のため設置したロープや看板の破壊・略奪、無防備な調査員への放水などの派手な妨害活動を行うと同時に、組織された撮影班によって撮影した映像を瞬時に世界に流して反捕鯨気運を煽(あお)る活動を行いました。最悪の事態を避けるため、調査船側が放水で妨害行為を排除しようとすると、今度はその行為が活動家にとって危険であると虚偽の宣伝を世界中にばらまき非難する始末です。

―― 調査捕鯨の今後に向けた抱負を

小川 日本が行っている捕獲調査は国際捕鯨取締条約第八条で認められた正当な調査活動です。捕獲調査計画および調査から得られる科学データは、科学委員会に報告され、この調査の結果、南氷洋には七六万頭のミンク鯨が棲息しており、毎年二、〇〇〇頭捕獲しても何ら資源を損なわないことが反捕鯨の科学者を含む科学委員会で合意されています。科学論争で負けた反捕鯨(IWC加盟国の三分の二を占める)は、方針を一八〇度転換し「鯨類の資源状態にかかわりなく」数の力で南氷洋のサンクチュアリーを提案、決議するなど条約で認められた捕獲調査にも反対しています。当然日本は不当な決議には異議申立をし、現在実施している科学調査の一層の充実を図るほか、海洋資源の持続的利用に賛同する国々のIWC加盟を働きかけるのはもちろん、CITES締約国会議、FAOの水産委員会等で日本に賛同する国々の理解と協力をお願いしているところです。

私たちは今後とも鯨類資源調査の充実を図り、新しい時代の捕鯨の再興を目指す努力をしてまいりますので、ご理解とご支援をお願いいたします。(二月十日、共同船舶で、聞き手=村上)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION