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1.3.2 研究の評価

本研究で得られた成果を評価すると以下のようになる。

(1) 高速運転実用可能性

GPSを利用した車両位置検知については、現状の精度においても、高速信号出力の条件を吟味すれば可能であると判断できる。また、試作装置による模擬的な高速信号指令試験の結果より、条件が満たされた場合に高速信号指令が出力され、可能距離走行後または異常検知をした場合に信号が解除されることを確認した。

従って、本構成による基本的な高速信号システムの機能、安全性については検証されたと言える。しかし、これらの検証は模擬的に実施したものであり、実際は交通信号機との連動が重要であるため、こうした結合試験が必要である。また、実用化に際しては、地上〜車上間における情報伝送の信頼性の検証等も必要で、現車による確認が必要である。

(2) シミュレーションによる評価

LRVと路面電車が混在している場合に、TRVのみに高速信号を出力することによる効果をシミュレーションにより検証することとした。モデルとしては、直線で、路面電車の停留所を設定し、その間に交差点を任意に配置でき、系統制御方式の信号機の模擬が可能であり、また、同方向(同一、対面)の自動車交通量も設定できるものであり、実際の路線ではないものの、高速化の効果をある程度把握するには可能であると判断した。

結果として、本モデルにおいては、ある区間に遅れを生じた場合、LRT用高速信号を利用すると遅れの回復が図られ、混雑率の平均化、表定速度低下の減少が確認された。さらに、この信号に出発抑止の機能を持たせると、等時隔制御も可能となり、混雑率低下に寄与することが確認された。従って、LRT用高速信号システムは、適切な走行指令(高速、出発抑止)により、在来の路面電車と混在する区間において効果があり得ることを確認した。

ただし、この結果はあくまでシミュレーションによるものであり、現実には交通信号機や自動車の存在(右左折、交差方向)により必ずしもこうした効果が顕著に現れるとは限らないが、LRV高速化の効果の可能性は示されたと判断できる。

以上により、LRT高速運転用信号システムは、その技術的可能性が高いことを試作装置により確認し、導入効果もありうることをシミュレーションにより検証できたものと考える。

 

1.3.3 今後の課題

 

今後の主な課題としては以下に示すものがある。

(1) 地上基地局装置とセンタ処理装置間の情報伝送手段には有線を使用しているが、システム導入の際、新たにケーブルを布設するとなると、経済的負担が大きい。そこで、業務用無線機の使用などによりセンタ処理装置と地上基地局装置間を無線で結ぶ手段や、直接センタ処理装置と車載装置間を結ぶ手段など、トータルな見地からの情報伝送手段の検討を必要とする。

(2) 出発抑止はセンタ処理装置の手動入力で実現しているが、出発抑止の適切なマニュアル介入の支援を図るため、運転状況を監視して介入時期を判断する論理の検討を必要とする。

 

 

 

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