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はしがき

 

この報告書は、「LRT高速運転用信号システムの開発」の結果をまとめたものである。

LRT(Light Rail Transit)は路面電車の近代版で、高い走行性能を有していると同時に、低床を特長とする人に優しい、また、環境に優しい公共交通機関として、欧州の中核都市を中心に活躍している。我が国でも平成9年度に熊本市交通局に、平成11年度には広島電鉄でLRT車両(LRV;Light Rail Vehicle)が導入され、好評を得ている。しかし、よりLRVの導入を促進させるには、その効果が顕著に示される必要がある。また、近年の路面電車見直しの流れの中で、活性化の一方策としてLRV導入が挙げられていることも、その効果を期待されてのことと思われる。LRV導入の効果はいくつか挙げられるが、その一つとして高速化の可能性が挙げられる。即ち、高速で走行すること、交通信号機との情報授受により優先走行すること、さらに運転状況を把握して等時隔運転することなどを実現するシステムを開発するならば、スムーズな運行が期待され、LRVの導入がより促進されるものと期待される。

これらの状況に応えるため、平成11年度日本船舶振興会(日本財団)補助事業、カーナビゲーション等で使用されている汎用GPS(Global Positioning System)を活用して、走行中のLRVの位置を検出・追跡し、先行車両との間隔が十分に確保されているLRVに高速進行信号を出力する 「LRT高速運転用信号システム」を開発することとした。本開発事業では、まず、GPSによる車両位置検知システムを開発し、東京都交通局荒川線の現車試験において性能確認を実施した。つぎに、GPSによる車両位置情報を使用して各車両の位置を把握し、高速進行信号や出発抑止の出力の可否を判定し、当該車両に信号を出力するLRT高速運転用信号システムを試作し、総合試験によりその機能を確認した。さらに、本システムの実用上の諸問題を実システムで確認することは困難なため、車両の走行シミュレータを開発し、シミュレーションにより評価を行った。この結果、本システムを実現するための多くの知見を得ることができ、また、実用化のために今後検討すべき課題も明らかにされた。

以上より、本事業で開発された「LRT高速運転用信号システム」は、LRVの有する優れた走行性能を引き出すことが可能であり、速達性、利便性が向上し、さらに運転整理の面からも効用が期待されることから、今後の実用化に明るい見通しが得られ、LRV導入の促進に寄与することが期待される。

本開発事業は、社団法人日本鉄道電気技術協会に、「LRT高速運転用信号システムの開発」委員会を設置して審議を行い、試作・試験については大同信号株式会社に委託して開発を行ったものである。

ここに関係各位のご協力に対して深く感謝の意を表す次第である。

 

平成12年3月

社団法人 日本鉄道電気技術協会

 

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