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3 まとめ

強力吸引車の吸引性能については、実際に同車を使用し油防除作業に当たった関係者から高い評価を得ている。今回の水回収性能試験(風量80m3/min〉では揚程を10m、20m及び30mとし、それぞれ水平距離を同じく10m、20m及び30mとして掛け合わせ性能試験を行い、揚程により吸引性能は約10〜50kl/hと幅があるものの高い性能を有していることが明らかになった。また、油水吸引性能試験では、20,000cStとかなり粘度の高い潤滑油を用い、水平距離を10mと一定とし揚程を10m、20m及び30mとして性能試験を行ったが、揚程10mでは23.7kl/hと専用の油回収装置にも劣らない性能を有していることが判明し、関係者の評価を裏付ける結果となった。

また、今回の性能試験の結果から強力吸引車を実際に油防除作業に投入する際の留意事項として次の様なことが挙げられる。

(1) 吸引作業に際しては可能な限り揚程を低くすること。

(2) 粘度の高い油を吸引する場合、水と空気を適度に吸引し、ホース内の閉塞に注意すること。

(3) 閉塞した場合は一時吸引を中断し、レシーバタンク内の負圧の回復を待って吸引するという「間欠運転」を行うこと。

(4) ホース内の摩擦抵抗をできる限り小さくするため、摩擦抵抗の少ない配管材を使用するとともに曲がり部を少なくすること。

(5) 吸引した油は、油回収装置で回収した油木のようにかく拌されていないことから油木分離の時間が短く、油によっては吸引と同時に排水が可能である。

(6) ホース内を通過する大きさのゴミであれば、固形物でも海藻類でも吸引が可能である。

(7) 熟練したオペレーターを採用すること。

 

4 強力吸引車の応用運用

強力吸引車は、流出事故現場への移動、流出油の吸引(回収)、吸引した油の貯蔵、さらに貯蔵した油の搬出等自己完結型の極めて優れた油防除資機材と位置づけられるが、短所も何点か挙げることができる。短所の一つとして搭載タンクの容積が数m3と小さいことが挙げられる。また、吸引のためのホースの先端の保持を人力で行う必要がある。このような短所もあるが、この短所を補完する方法もすでにナホトカ号流出油事故で実証されていることから幾つかの方法について記載する。

(1) 強力吸引車と大容量タンク車の連結

強力吸引車は機構上、タンク容積が小さいことから回収した油を大量に貯蔵できず、タンクが満タンとなった場合、回収作業を中断して回収油をピット(回収した油を入れる大きな容器を言い、ナホトカ号流出油事故では土中に穴を掘りテントで覆ったものや、鉄板で箱を作ったものを使用した。)まで搬送しなければならず、とても効率の悪い作業となる。

このため、大容量のタンクを有するバキュームカー(一部商品に「バキュームダンパー」と呼称されるものがあり、一般的にもこの名称が普及していることから、以後「ダンパー」という。)に強力吸引車を連結し、ダンパーのタンクをレシーバタンクとして利用するものである。強力吸引車とダンパーの基本的な組み合わせを図2-1-7に示す。

 

 

 

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