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6. 事前復興と事前復興計画

阪神・淡路大震災を契機に、災害発生を前提とした「事前復興」、「事前復興計画」、「都市復興マニュアル」等が社会的に認知されつつある。

 

[事前復興] 大規模災害が発生した際に、ほとんど確実に大きな被害を受ける木造住宅密集市街地を対象に、「住市総」や「密集事業」等を組み合わせたまちづくりを推進し、“発災前にまちの復興を行なおう”という動きが、「事前復興」として位置付けられた。

このような動向は、これまでの復興計画のいくつかが従前の計画に基づいて策定されてきたことや神戸市の「重点復興地域」の指定が被災程度ばかりでなく、発災前の都市再開発方針、神戸市インナーシティ総合整備計画が下敷きとなり、さらには、「従前からのまちづくり地区では、復興まちづくりが進展している傾向がある」という評価に基づいている。そして、東京都における「防災都市づくり推進計画」や1997年5月に公布された「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」として結実した。

 

[事前復興計画] 1995年7月、防災基本計画が抜本的に改正され、「事前復興計画」に関する研究の推進が盛り込まれた。ここでの「事前復興計画」は、“想定されている被害を前提として、その被害からの復興の計画を、各地方自治体が事前(発災前)に作っておくこと”とされている。

 

[都市復興マニュアル] 阪神・淡路大震災における木造密集市街地の壊滅的な被害を踏まえて、東京都では、1981年に策定した「都市防災施設計画」を大幅に改訂し、「防災まちづくり推進計画」を1997年3月に策定、災害の発生を未然に防止する予防計画と大震災発生後の都市を再構築するための復興計画とを「安全で安心なまちづくり」の両輪とした。

そのため、復興計画自体ではなく、都市復興の理念、都市復興のプロセス等を示し都市づくり部門の行動指針と計画指針としての「都市復興マニュアル」を、1997年5月に公表した(表3)

 

参考文献

今井実、長谷川義明、楢崎泰道編著『新時代の都市政策第8巻 都市防災』ぎょうせい、1983。菅原進一「都市大火始末記1]〜19]」『近代消防』Vol.29、No.4、1991〜Vol.31、No.1、1993。日本火災学会編『火災便覧第3版』共立出版、1997。(財)神戸都市問題研究所編『震災復興の理論と実践』勁草書房、1996。日本都市計画学会関西支部震災復興都市づくり特別委員会都市復興研究部会編著『ここまできた震災復興1997』日本都市計画学会関西支部分室、1997。日本建築学会建築経済委員会住宅の地方性小委員会『大震災2年半・住宅復興の教訓』日本建築学会、1997。兵庫県南部地震特別研究委員会特定研究課題6『事前都市復興計画のビジョン』日本建築学会、1997。

 

表3 「都市復興マニュアル」のプロセスの概要

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出所:東京都都市計画局開発計画部防災計画線『東京都都市復興マニュアル』(東京都、1997)11頁

熊谷良雄

 

 

 

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