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資料12 阪神・淡路大震災における住民活動の事例

 

(1) 神戸市長田区の事例

戸崎通2丁目の西側のブロックが午後5時頃火に包まれると、戸崎通2丁目自治会長らの呼びかけで、地域住民がバケツや洗面器を集め、燃えやすい軒先の日除けや暖簾をはずし、そしてポスターをはがした。

続いて、バケツリレーによる消火活動を始め、40トンの防火貯水槽から汲み出した水をリレー方式により運んで先頭に集め、まとめて火元にかけ、延焼を防いだ。これには、次第に人が集まり200人を越す住民が参加した。

この過程で、倉庫の破壊により延焼を防止したり、燃えて倒れかかる家屋を火元の方に押し戻して延焼を防ぐ、といった活動も展開されている。

この後、三田市からの応援隊及び神戸市内の消防団の活動も加わり、午後8時過きには火勢が衰えたが、住民による消火活動がなければ、火災はさらに拡大し、被害が大きくなっていたであろうといわれている。

 

(2) 西宮市甲陽園地区の事例

甲陽地区婦人防火クラブは、毎年地区婦人会の中から選出され、防火技術、応急手当技術などの習得や地域の防火活動を行っている。

クラブ員有志は、発災当日の状況から、避難者の食料及び水が必要と考え、クラブ員のほか、日頃から協力関係にある婦人会、市社会福祉協議会約20名の積極的な協力を得て、避難者や希望する住民に4日間毎食500食分の炊き出しを行った。

 

(3) 北淡町の事例

北淡町では、全3,667世帯中全半壊家屋2,242世帯という多数の被害を出したが、死者は圧死等による39名、火災は1件にとどまった。

この中で、消防団は、住民と一体となって懸命に消火活動や人命救助活動に取り組んだ。消防団は、地域の実情に精通し、倒壊家屋のどの場所で生き埋めとなっているかを素早く察知し、短時間で救助活動を行った。その結果、倒壊家屋の下敷きになっている被災者約300名はすべて救出され、また、行方不明者がないことも当日中に確定された。

消火活動においても、消火栓が使用不能となる中で、棒切れや竹箒等を使用してボヤを消すとともに、各家庭のプロパンガスの元栓を閉めて回った。

また、傾斜地等の亀裂にシートをかけるなど大雨による二次災害防止活動を行ったほか、避難所への誘導や救助物資の搬送・受け渡し等も実施している。

このように北淡町消防団が大きな活躍ができたのは、消防団が町内会単位で構成されでおり、一人暮らしの住民を定期的に訪れるなど、地域に密着した日常の活動を通じて地域の実情を熟知するとともに、町内会など住民と密接な協力関係を築き上げていたことも大きいといわれている。

町内会等についても、消防団と連携し、住民の所在の確認や消火活動等を積極的に実施するとともに、炊き出し・清掃の当番制など避難所のルールづくりや運営を主体的に行っている。

 

 

 

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