今日は、山形のローカルテレビが二局、取材にやってきた。
これまで何度もテレビや新聞が取材に来ているので、我々ももう馴れっこだ。カメラの二台や三台驚くことも無い。
しかし、今日の人たちにはビックリした。と言うより頭に来た。全く何を考えているのか。
上演中にスリッパをパタパタ鳴らして走り回る。客席からギャラリーヘ、ギャラリーから今度は舞台袖へ。二つの局が競争するように走り回るのだ。うるさいったらありゃしない。
挙げ句の果てには、カメラ担いで舞台に上がってきてしまった。まさに傍若無人である。
目の不自由な子たちが、芝居を観る時、たよりになるのは声と音である。全神経を集中させ、舞台の音と声をたよりにイメージの糸を手繰り寄せている時に、何という無神経な人たちだろうか。
報道なら何をやっても良いのか ?!
テレビカメラには葵の紋所でも入っているのか ?!
それでも、ノリノリの子どもたち、ニコニコ顔の先生の顔に、私たちもホッとした。
学校を出る時、校長先生を筆頭に全ての先生方が見送りに出て来てくださった。
まるで子どものように明るく元気に、いつまでも、いつまでも、手を振っていた。見えなくなるまで……。
九月二十日(月) 晴れのち曇り時々雨。
福島県立須賀川養護学校。
今日の客席は大変バラエティに富んでいた。
養護学校が100名。郡山の分校からはるばる13名、隣の国立療養所福島病院から16名(看護婦さん付き)、作業所から11名、教職員78名、保護者10名、以上総勢228名プラス看護婦さんである。しかも、全員非常にお行儀が良い。
高校生の司会で、緊張した雰囲気の中開演したのだが、『歯のいたいワニ』『エンとケラとプン』と進むうち、看護婦さんや先生が積極的に参加してくれたおかげで、大分ほぐれてきた。
終演後、そのまま舞台上で質問会が行われた。「劇団は創立して何年ですか ?」「芝居を一本創るのにいくらぐらいかかるの ?」「台本は誰が書いたの ?」「大きな声はどうしたら出るようになるの ?」等々、主に高校生からの質問。財政上の問題にまで言及されたのには、いささか面喰らった。
「私でも女優になれますか ?」これは先生からの質問であった。
「もちろん、なれると思いますよ。女優さんにも色々あるし……」(笑い)。
小学生からは、こんな質問があった。
「セットの柱にひびが入ってるけど、何年ぐらい使ってるの ?」
「えっ、ああ(良く見てるなァ)、あれはねェ、ヒビが入っているように作ったの。なかなか難しいんだよ、ああいう風に作るのは。新品のピカピカじゃ落ち着かないでしょ」
もうシドロモドロである。
「エーッ ! ピカピカの方がいいよ !!」(大爆笑)
恐れ入りました。
冷や汗をかきながら、なんとか質問の雨をくぐり抜けることができた。
「かなり高度な、突っ込んだ質問がありましたねェ」と先生に言うと、「彼は、身体が弱いんでここに来ているんですよ。特に障害がっていうわけじゃないんですけど」とのこと。
なる程、そういう子もいるんだ。新たな発見であった。
九月二十一日(火) 雨。
新潟県立村上養護学校。
先生がメチャメチャ明るい、というのが第一印象。先生が明るい学校は、子どもたちも元気で明るい筈。楽しみである。
客席は全部で106名。開演前から賑やかな笑い声が溢れている。
元々、暗幕のついていない体育館に、先生方が苦労して暗幕を張り巡らせてくださったのを見ても、期待の高さが伝わってくる。
勢い、我々のボルテージも上がろうというものだ。
『エンとケラとプン』はクイズ形式。
主人公のヒロ君が、知らない男の子に通せんぼされる。
「さあ、エンとケラとプン、どれが出てくるか、みんな大きな声で、せえのォ!」
ここで、普通なら「エン」とか「ケラ」とか「プン」とか言うのだが、今日は、
「せえのォ!」
「オー!」
と一番前にいた男の子。これには全員思わず笑いこけた。
正解は「ケラ」。
「エー!!」と子どもたち。
「だって、男の子の顔がドロンコで可笑しかったからでーす」
「ドヒャー!!」今度は子どもたちがひっくり返った。
非常にレスポンスが良い。あっという間の一時間であった。
彼らのパワーに圧倒されたか、激しかった雨もいつの間にかあがっていた。
九月二十二日(水) 雨。
新潟県立新潟盲学校。
今年のツアーも、今日でとうとう最後になってしまいました。
一昨日からの雨が、今日もまだ降り続いています。台風の影響だそうです。