<児童演劇全国離島巡回公演>
考えさせてもらった中学生との交流
劇団風の子 みかみかん
見島へ
10月19日、雲ひとつない快晴。AM8時30分、山口県萩港着。「時間がないよ!」の声を聞きながら、トラックから荷物用のコンテナに荷を移す。
高速艇“おにようず”で見島(みしま)に向けて出発。見島は萩市の北西45?、日本海に浮かぶ島である。
一時間程度で見島着。荷コンテナから用意された軽トラックに積み換えを急ぐ。幸いにも会場条件が良く、少し余裕をもって開演できた。
当初の予定では、保育園から中学生まで100人程、加えて島の人たちが20人程度。しかし、島の人たちがどんどん集まってくる。最終的には60人程になり、パイプ椅子が足りなくなった。しようがないので床に直にすわっていただいた。
開演。島公演の初日ということもあり少し心配でもあったが、皆さんリラックスして観ていただき、私たちの緊張までほぐしてもらった。あたたかい雰囲気のなかで公演が終了。
中学生との交流 1]
中学生だけが残り交流会。舞台の前にパイプ椅子が私たち用に並べられた。質問、よく手が挙がる。「何故、劇団に入ったのか」「今やっている仕事の中で、特にこだわっているものは何か」等々。私たちも思っていることを正直に話す。自分達の仕事を振り返ることができた貴重な時間でもあった。
交流会後、中学生や先生たちが舞台裏をのぞき、小道具に触わったり、楽しく一緒に遊んでいる。
さて、片づけ。今日のうちに港まで荷を運びコンテナに積み込まなければならない。先生方も一生懸命にお手伝い。軽トラもフル回転である。豪華な夕食、夜9時には就寝。
翌20日、AM7時35分発“おにようず”で萩に向かう。“おにようず”とは、この見島の名物で、正月にあげる大きな凧のこと。
萩に到着。荷物はそのまま大島行きの船に乗せてくれるとのこと。ホッと、胸をなでおろす。
中学生との交流 2]
AM11時、ひとまわり小さな船で大島へ。大島は、萩市の沖合い8?。30分程で着。軽トラック三台に目一杯積み込んで港を出発。体育館に荷を降ろして昼食。
「なにしろ狭い島なので、もっといろんな人からいろんなことを学ばせたい」との先生の要望もあり、私たちは2人ずつ、3学年に分かれ教室に入る。大島中学校は36人。私ともう一人は、一年生のクラスに入る。一年生は8人である。観劇後の方が良かったのではないかと思いつつ、覚悟を決める。
生徒は皆、緊張気味。私から「何か聞きたいことがある?」と問いかけるのだが、黙り込んでいる。どうにかして緊張をほぐそうとしたが難かしい。やっとでてきたのが、劇団へ入った動機であり、劇団を続けている理由である。私たちも一生懸命話しつづけた。
チャイムが鳴る。もう終わりである。もっと具体的な何かを用意しておけばよかった、と悔やむ。
二年や三年について後で他のメンバーに聞いてみたのだが、やはり静かだったとのこと。ただ三年生は、発表会でやる劇を演じてくれたらしい。日頃、私たちは中学生に触れることが少ないので、皆とまどってしまったのである。
翌21日、AM10時45分開演。保育園・小学校・中学校で100人程。加えて島の人たちが30人、皆さん楽しみに集まってくる。
保育園の子どもたちがまず芝居にのり、小学生がそれを揺り動かす、中学生はそれを支えてくれる。観ている人たちの心の波が心地よく体育館に拡がっていく。
正午、幕。再び船で萩港へ。
今回の島の旅は終わった。振り返れば、中学生との交流が印象に残る。中学生が最も興味をもっているのは、私たち大人がどれだけ自分の仕事に誇りを持っているのか、そしてその仕事に何を賭けているのか、ということのように思われる。私がそれに答えられるのは、やはり芝居の基本であるストレートな表現しかないのだろうと、今思っている。
※劇団風の子は『まもるのとなり』(風の子中四国作/みかみかん演出)で、10月19日見島・10月21日大島(山口県)、10月24日生名島・11月18日大島(愛媛県)を巡演。