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児童演劇全国離島巡回公演

 

日本財団特別協賛による『児童演劇全国離島巡回公演』も4年目。劇団道化は福岡県の離島を9月10日相島(あいのしま)、9月13日地島(じのしま)公演を予定していたが、相島公演はどうにか実施したものの、地島公演は大雨のため中止延期。相島公演の報告である。

 

汗と雨と波しぶきと

劇団道化 大瀬美恵

 

9月10日、『児童演劇全国離島巡回公演』で相島へ。早朝から漁港に行くと、灰色の雲が重い。「雨が降るっちゃないと?」と言いながら、トラックから荷物を降ろしだす。漁船が二艘、港にとまっていた。この二艘に全ての荷物をのせなければいけない。予感的中! 雨がポツリポツリと降りだしてきた。急いでシートをかける。雨は降ったり、やんだりする中、なんとか全ての荷物を積み終えた。酔い止めの薬を飲んで、私も船に乗りこんだ。

道具が濡れないようにシートを押え、いざ出発! ラッキーなことに海は穏やかで、されど揺れなかった。が、そこは手を伸ばせば海。いきなり波しぶきが顔にかかる。しょっぱい。

無事、島へ着く。軽トラック三台に積みかえる。荷物が落ちないように荷台に乗って、しっかり押える。六往復のピストン輸送で、ようやく全ての荷物を学校に搬入し、仕込みに入る。すぐ隣りの海からの湿った空気が生暖かい。時折、子ども達が体育館を覗いては、キャッキャッと声をあげている。どうやら楽しみにしてくれているようだ。

仕込みを終えると、お昼が待っていた。給食の先生が鍋を準備して下さって、普段あまりお目にかかれないフグや魚の肝が入っててスタミナ満点だった。しかし、芝居の前で、あまり食べられなかった。このことが、今でも心のこりだ。

 

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漁船から島の軽トラへ積みかえ

 

「さっいよいよ開演です」。ゾクゾクと、子ども達、おじいちゃん、おばあちゃん達が、やってきた。その中に船長さんの姿もあった。子ども達よりも大人の数の方が目立つ。だって小学生は八人しかいないのだから……。

最初は、観客も私達も緊張していたが、おばあちゃん達が、ドッと笑ってくれた事で、その緊張がサーッとほぐれていった。私が舞台を走り回る所では拍手が起きたり、なんだか大衆演劇のスターになった感じで、ちょっとくすぐったい。全ての苦労が報われるとは、きっとこういう事を言うのだろうと思った。

バラシにとりかかると、またまた雲ゆきが危しくなってきた。港へ行くと雨がひどくなってきて、漁船への積み込みにも相当時間がかかった。雨と波しぶきに打たれながら島をあとにした。海は、ますます波が高くなってて、波しぶきが、容赦なく顔にかかる。もう目を開けていられない状態で、キャーキャー騒いでいると、見兼ねた船長さんが、私にシートをかぶせてくれた。船長さんの優しさが嬉しかった。

全て終えると、汗と雨と波しぶきで、身体中がドロドロになっていた。

翌日、私達には、サビを落とす作業が待ち受けていた。しかし、私の記憶の中で、この公演のことはサビつかないだろう。

追伸。三日後の地の島での公演は、大雨の為中止。

※劇団道化は『ピアニャン』(中村芳子作/熊井宏之演出)で、9月10日、福岡県相島で公演。

 

 

 

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