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いよいよ文化祭

 

そんな頃でした。前半と後半に分かれで練習していたため、私が放課後、後半の方を見終わって前半部の生徒の練習場所へ行ってみると、「一回通したら、男子はもう帰ったでぇ」と他の生徒たちも遊んでいます。台詞を八割方覚えた頃でしたので、安心して気持ちが緩んだのでしょう。その後も三日ほどピッチが上がりません。喝入れが必要です。今年は、台詞・動きともめざしているレベルが違うことを再確認し、本番同様の稽古へと進めることにしました。

いよいよ文化祭当日が近づき、生徒たちの真剣さも増してきました。効果音・照明もつけての練習です。「通し稽古できるのもあと三回でぇ」という頃から、どんどんとすばらしい劇になっていきました。もうそのころから私は大満足の有頂天で、「今年の劇はひと味もふた味もちがうでぇ」とあちこち宣伝に走っていました。

いよいよ十月二十五日、文化祭当日。大勢の観客の前で堂々とした、中学生らしく自然な演技が続きます。自信にあふれた動作、声。どの生徒もすばらしいものにしようと真剣に取り組み、観客を魅了していきます。最後の台詞「グッドバイ・マイ…」を聞いたとき、演劇素人の私は感無量となり、「自分の受け持ちのクラスでこれ以上の劇はもう見れないだろうな」と胸がいっぱいになりました。すばらしい生徒に恵まれ、本当にうれしく、また、頼もしく感じました。

春には巣立ち、それぞれの道を歩み始めるわけですが、きっと生徒たちの中にも、私と同じような感動があり、この劇への取り組みは、中学校生活の輝いた思い出の一つとして生涯忘れることはないだろうと思っています。

 

生徒の手紙から

 

★…約束していた台本を本当に送っていただき、ありがとうございました。特に『グツドバイ・マイ…』が気に入り、文化祭で挑戦しました。

私は劇が苦手なので、中学校3年間で、今年初めて役になりました。へたな所も主役の人たちの演技でカバーし、私達にとって本当にすばらしい劇をすることができました。

3年生25人中24人が出演し、もう一人も音響でがんばってくれました。全員で劇に取り組んだのは今年初めてです。

それも如月舎のみなさんの名演技と、送っていただいた台本がすばちしい物だったからこそ、できたのです。本当にありがとうございました。如月舎の演劇のおかげで、大きく成長した子ども達がいることを忘れないでください。

★…『グッドバイ・マイ…』という台本を送っていただいたことを感謝しています。社会の先生に、台本がすごく良かったとか3年生の劇が一番よかったとか言われてとってもうれしかったです。

劇にはクラスのほぼ全員が出演しました。でも演技のうまい人、苦手な人がいるわけですから、はじめはうまくできませんでしたが、居残りに居残りを重ねて、やっと劇らしくなってきました。はじめはぼう読みだったセリフもだんだんと感情が入ってきました。この劇のおかげで私たちは団結と自信を得ることができました。

 

生徒たちは燃えた

岡山県笠岡市立北木中学校長 佐藤泰徳

 

文化祭まであと一ケ月あまり。心待ちにしていた脚本が(社)日本児童演劇協会から届く。先を競って手にする生徒たち。中学校最後の文化祭に賭けていた三年生は、図書室にある脚本にあらかた目を通していて、送られてきた三つの中から迷わず『グッドバイ・マイ……』を選ぶ。

良い劇は良い脚本から…良き伝統の中で育った生徒たちは知っている。よい脚本に巡り会えた生徒たちの取りかかりは早い。ダブルキャストで配役が決まり、道具方も決まる。まずは道具づくりからとクラスのムードを盛り上げる担任のパフォーマンスと生徒たちのやる気の相乗効果で日に日に盛り上がる。そんな中、人口一九五〇名、約一千世帯の全島に六五名の生徒たちが手分けして、文化祭のチラシを配布してまわる。そして当日、小学生からお年寄りにいたる二〇〇名を越える観衆の中での晴れ舞台である。

“…初めての文化祭だった。中学校では「誰かが用意してくれるなどと言うのは全くなく、私たちが中心になって作品や劇、音楽、唄の発表をする」それにびっくりしたことは三年生の劇だ。私たちの劇と比べると、断然レベルが高い。一人一人が役になりきっていて、声も大きく出ていてとても感動した。「すごい!私たちも来年はこの三年生の劇を手本にして、良い劇をして見せるぞ」と思った…”(一年女子感想文から)。

思えばこの三年生も上級生から学んだ子どもたちである。夏休み明けの『児童演劇全国離島巡回公演』の如月舎との出会いから学んで生徒たちは燃え、私たちもまた至福の時を共有することができた。(社)日本児童演劇協会はじめ関係各位に感謝申し上げる次第である。

 

 

 

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