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<岡山県・北木島>から

3年生25人、全員で頑張りました

 

昨年の9月10日、『児童演劇全国離島巡回公演』で、劇団如月舎(『のらねこハイジ』)が、岡山県笠岡市の北木島で小・中学生を対象に公演を実施。中学三年生にも大きな刺激を与え、文化祭で上演する脚本を送ることを約束して帰京。

編集委員の森田勝也さんに相談し、森田さんからいただいた『グッドバイ・マイ……』(小野川洲雄作)ほか二作品を北木中に送付。その三作品から、生徒たちが『グッドバイ・マイ……』を選び、文化祭で上演した。   (石坂)

 

演劇素人担任奮戦記

 

岡山県笠岡市立北木中学校

三年担任 松葉修

 

「北木中学校始まって以来最高の劇を、自分たちの力で作ろう !」そう言って文化祭で上演する学年劇への取り組みがスタートしました。

我が北木中学校は瀬戸内海の真ん中に浮かぶ全校生徒六十五人ほどの小さな学校です。私は昨年赴任し、このクラスを二年生の時から受け持っています。

昨年、クラスの和が乱れ、自分の責任を果たさない生徒が見られ始めていたころ、文化祭で『もう一人のピノキオ』を上演することになりました。もともと演劇への関心の高い女生徒が多く、役者はかなりそろっています。劇への取り組みの中でクラスの人間関係を深め、責任を持って与えられた役割を果たすよう導くことはできないかと考えました。そこで、二十六人の生徒一人一人に大切な役割を持たせ、全員をしっかりと参加させることにしました。大きな声でしかることもありましたが、劇は大成功。子供は行事で成長するとよく言われますが、正にそんな気持ちを強く持ちました。人間関係も深まり、何より生徒が「やればできる」という自信を持ってくれたように思います。そして、この時から私と生徒との距離も近づいたように記憶しています。

そして今年。冒頭に書いたように、すばらしい劇ができる素地は整っていたわけです。あとは、生徒たちにその気持ちがあるかどうかということだけです。一部の生徒は、昨年自分たちが行った劇で、もう満足しているようにも見受けられました。

 

いい脚本との出会い

 

生徒の気持ちが乗るいい脚本が欲しい。「この役を演じたい」と思うような脚本はないだろうか。みんなが燃えるような……と私は思っていました。

文化祭も近づき台本選びが始まりました。生徒が選んだものは、卒業もの、恋愛もの、そしてこの(社)日本児童演劇協会の方が下さった『グッドバイ・マイ…』でした。私は三つの台本に目を通した瞬間、これしかないと思いました。これは、私たちに「すばらしい劇をしなさい。この脚本ならできますよ」と言っているように感じました。でも、今年は最後の年。生徒の力ですばらしい劇を作ってもらいたい。そんな思いが強く、意見を挟まず黙っていました。

 

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『グッドバイ・マイ…』の舞台

 

台本を読み、生徒たちの意見も『グッドバイ・マイ…』にまとまり、ほっとしたのもつかの間、次はいよいよ配役です。昨年同様全員に大切な役割を、ということで、台詞の多い役は前半と後半に分け主役の人数も増やしました。どんどん配役が決まっていきます。やる気のある女子が主な役をどんどんとっていきます。ラストの『グッドバイ・マイ…』の台詞を言いたい生徒が、後半の「黄郎」を争っています。これは予定どおり。私は男子の登場を待ちます。そのうち、クラスでの話し合いが、「老人と青太は男子じゃろう。男子四人出ねえ」と進んでいきます。私はしめしめという感じです。「誰が出るかな。四人は難しいんじゃない ?」と思っていると、三人はすぐ決まりました。男子の成長を喜びながら見守っていると、あと一人は指名されて決定。配役もばっちりです。役者は多いので脇役も主役級です。もうこの時点で私は成功を確信しました。

あとは昨年の反省を生かし、小道具作りを急がせ、できるだけ早く台本を持たずに立ち稽古を始めさせることです。本番一週間前には舞台で通せるように計画表を作り、小道具作りと台詞覚えに入りました。

ここでも意欲的な生徒が先陣を切ります。台詞を二日で覚えて、まだ覚えていない生徒にプレッシャーをかけます。昨年の経験もあって、思いのほか早く、台本をちらちら見ながらの立ち稽古までこぎつけました。ここまですこぶる順調。意欲的な取り組みに目を細め、「みんなやる気じゃなあ。自分たちでやっているなあ」と笑いながら練習風景を眺めていました。

 

 

 

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