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ポンプ車  五台

救助工作車  一台

小型動力ポンプ  二台

出場人員  消防職・団員 六七名

 

三 罹災建物概要

罹災した建物は、昭和四三年と四五年に相次いで建てられた、ともに木造平屋瓦葺きトタン張りの種豚飼養及び繁殖舎二棟と糞尿処理施設一棟を加えた計三棟であり、延べ面積合計一、一〇〇・二六m2を全焼したものである。出火当時、養豚場二棟には種豚七頭、母豚一七二頭、幼豚一、一九一頭が飼育されていた。

 

四 活動概要

(一) 出動途上の状況

七月二五日午前四時三八分「養豚場が燃えている。大きな音がする。」との一一九番通報を受け、第一出場を指令、タンク車三台と救助工作車の出動、地元消防団及び地区自衛消防団への通報連絡を行うとともに非番職員を召集した。

火災現場は、最寄りの寺井消防署から北東方向二・五kmに位置し、現場へ急行する小隊長は、未明の空を覆う大量の黒煙を視認した。更に接近するにつれ全体に火が廻った三棟の建物とガスボンベ数本が青白い閃光とともに大音響を発して爆発している現場状況を確認し、指令室に対し第二出場を要請した。

(二) 先着隊現場到着時の状況

現場到着時、既に三棟とも建物全体が火炎に包まれ最盛期を迎えようとしていた。豚の絶叫は聞こえるがガスボンベの爆発は断続的に続いており、水利部署直前にも二回の爆発音とともに車体が激しく揺れる。豚舎内には一、五〇〇頭の豚がいるとの情報を得たが、猛烈な火勢と輻射熱、ガスボンベの破裂と飛散のため接近するのも困難な状況であった。

豚舎周辺に建物は無く延焼の危険も無いことから、消火活動に着手専念する。

(三) 消防活動状況

先着のタンク車隊は、現場直近の農業用水橋上に部署し、正面と側面から放水を実施し、同時に現着の救助隊も要救助者無しとの情報を得て、消火作業に加わった。しかし、後着隊は取水スペースが狭いため用水からは取水できず、南北の各集落内の公設消火栓に水利部署することとなり、遠距離送水を余儀なくされた。

既に三棟とも焼け落ちており、更に周囲は全て水田であり、殆ど無風であったため、延焼及び飛び火の恐れは無いとの判断から、火点三棟を包囲し徐々に内部進入し鎮圧を図る。現場は水はけが悪く豚の死骸、糞尿、飼料が混ざり強烈な異臭を放って滞留していた。養豚場内部の四周に張り巡らされたガス管から噴き出す火勢は強烈であり計一一台による放水を続行した結果五時一三分ようやく鎮圧した。残火処理において、舎内の一千頭を超える豚が、迫り来る火炎から逃れようとして柵に前足を掛けたまま焼け死んでいるもの、腹部が破れ原型をとどめない位焼損の激しいもの等、累々たる死骸の山は炎熱地獄を見る思いであった。

 

五 延焼拡大要因

(一) 火災発生が早朝であり、周囲に民家は無い。また、東及び南東方向には小高い丘(古墳群)で遮られて見通しが利かず発見が遅れた。

(二) 古い木造建築物からの出火であり、一八本の五〇kgLPGボンベと周囲に配管されたガス管により延焼を加速させた。

(三) 水利状況は、川幅五・五mの農業用水が近くに流れているものの部署スペースが狭く、公設消火栓も二〇〇m〜四〇〇m離れており良好ではない。LPGボンベの破裂、飛散が防御活動の障害となった。

 

おわりに

本火災は、当日の気象条件に恵まれていたこと、周囲に延焼危険が無かったこと等、いくつかの好条件に恵まれ、管内で発生した火災としては大火の部類に入るが、比較的短時間に消火できたのではないかと思われる。

しかし、一、三六九頭もの豚が焼死するという惨劇は全国的にも稀な事例であろう。

 

 

 

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