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上野 それはそうでしょうね。私の見る範囲で、本当に普通の親、中産階級の親、教会と親がやはり子供に面と向かいますよね。そして、やはり子供は親の言うことをまず聞きます。そして、「お父さん、これはアンフェアだよ。フェアじゃないよ」ということを言います。それを「あなたはどう思うの」ということを言う癖をつけてから学校に出していますから、そういう意味でまず子供たちは親の言うことを聞くと思います。

B それはきちんと明記して、言葉にもしているというところがアメリカのすごいところだなと思います。

上野 言葉に明記しているというのはどういうことですか。

B 先生の指導が必ず行き渡っていて、必ずクラスにおいて子供たちに伝えるときに、それを言っていると思います。そして、その上で、「あなたたちの選択がそこにある」と、親は責任を持たなくてはいけないというところで、最終的な責任は持たなくてはならないというところが際立っていると思います。私の姉が現場の教師であるのですが、親が「子供が勉強しない。言うことを聞かない。あいさつをしない」というふうに持ってくるわけです。「じゃあ、あなたはどのくらいあいさつをしていますか」と聞くと「ええ、うん、まあ…」ということで、そういうことというのはごくごくどこにでもある話なのですが、大変重大な話だと思うのです。自分がまず、教育者として基本的なところで責任を持っているという意識がないから、先生のせいにしてしまうし、何とかしてくださいというところが多いと思うんですね。

例えば、教育の現場においていじめがあったとしても、自分が加害者でない限り、知らん顔をしているとか。それぞれがリスクを負っていない社会の延長が非常に今日的な問題だと思います。もちろん、アメリカもいろいろな問題があるのですが、基本的に親が責任を負うというスタンスに立っているということが非常に興味深いと思います。

上野 今、公共学校に入れないで自分たちで教育する、家庭で教育するというチャータースクールというものがたくさん出てきていますね。そこら辺はどこまで認めていくのかということでいろいろと議論は多いと思います。でも、もちろんアメリカ社会は本当に膨大ですし、多様ですからそう言えないかもしれないけれども、私はよき中産階級というのはきちんとした家族であると思っています。そこに教会というものが相当バックとしてあるという気はします。そこら辺が日本社会との違いとしてあると思います。

また、同時に、やはりあなたの自由ということ、あなたが個人でありなさいということは相当小さいときから言います。

 

 

 

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