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2. 講師報告

 

目加田 ただ今ご紹介にあずかりました目加田説子です。本日は、「国を越えたシビル・ソサエティー〜オタワ・プロセス、そして今後〜」ということでお話をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

現在、私が主に研究しておりますのは、トランスナショナル・シビルソサエティー、日本語では「国を越えたシビル・ソサエティー」です。そこで、そういった視点からICBLそしてオタワ・プロセスというものを分析しながら、今日はお話をしたいと考えております。

さて、先ほどもご案内がありましたように、ICBL、地雷禁止国際キャンペーンは1997年のノーベル平和賞を受賞しております。97年の10月10日にノーベル委員会がその旨を発表し、実際には12月10日に授賞式が行われました。この97年度のノーベル平和賞はICBLというネットワーク、そしてそのコーデイネーターであったジュディー・ウイリアムズ氏が共同で受賞したかたちになりました。従いまして、賞金も、当然ですが折半するということになったわけです。

12月10日にオスロで授与式が行われ、ICBLおよびウイリアムズ氏がその式に立ち会い、受賞しました。ところが、賞金の半分である約5万ドルの受賞金の振り込み先がなく、1年近く宙に浮いたままでした。つまりICBLには住所も銀行口座もなく、その約5万ドルの賞金をどこに振り込めばよいのか不明のままだったのです。1年近く経った昨年末、ようやく、ICBLが新設した銀行口座に賞金が振り込まれました。

このエピソードをご紹介いたしましたのは、本日お話させていただくトランスナショナル・シビルソサエティーというものが持っている一面をある意味で象徴する出来事だったからです。つまり、国際政治のなかで世界の市民社会、そしてICBLのような連合体は間違いなく重要な役割を担うようになっているわけですが、実際にはICBLといったトランスナショナル・シビルソサエティーは実体が明確ではなく、非常につかみどころのないネットワークであるというふうに理解されているわけです。ICBLとウイリアムズ氏がノーベル平和賞を受賞した際にも、ウイリアムズ氏がバーモント州の山奥からコンピュータ1台で世界を動かしたといったような報道もなされまして、住所も事務所も、そして銀行口座も持たない、連絡先もないといったようなネットワークが、どうして地雷廃絶のような国際条約をつくりあげるに至ったのか、そもそもICBLとは何なのかといった疑問を持つ方もいらっしゃったわけです。

 

 

 

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