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民族系のマネーセンターバンクが2つ残ればありがたいというようなことを言っておられたんですね。新聞では、それまで3つか4つという話が出ていたのに、柳沢さんは2つというところまで考えていて、最近1ヵ月ぐらいの間に急速にあの人は考え方が変わったのかな、という気がしないでもないんですが。

1つ教えていただきたいのは、銀行がもう一段上がらざるを得ないだろうと、私もそう思うんですね。真面目に考えてやると、結局貸手の選別をうんと強化せざるを得ない。そうすると銀行経営の資金状況というのは、相対的に収縮することになるでしょう。

今預金者はどこへお金を入れているかというと、国家保証があるからといって、とりあえず郵貯に入れているわけです。ところが郵貯の類いの公的金融システムというのは一番リスクの高いところに貸し込んでいるわけですから、遠からず倒れるだろうと思うのです。民間なら全部は倒れないのですが、これが倒れるときは国家を沈めていくわけです。だからすごく怖い。

結局長期的にみると、リスク資本市場を拡充していかなければならないのではないかと思うのです。松井証券のインターネットではどうしようもないわけです。リスク資本市場そのものが本当に、証券会社というかインフラが腐っていますよね。銀行どころではありません。どうするのかと思ってしまいます。将来的にはリスク資本市場を拡充しないと、日本の経済は新しい経済にならないのではないかと思うのですが、その点に関してあとでちょっと教えていただきたいと思います。

1つ大変重要な問題なのですが、実はアメリカとの関係ですが、失業が怖くない社会をつくらないとうまくないだろうと思うんですね。銀行の人は怠けているとおっしゃいましたが、私もそうだろうと思います。ただ、おなかの底では「そんなに人員整理なんかできるか」「日本の社会としてはできないんだ」という気持ちが非常に強いのだと思います。

日本の労働政策は、企業が終身雇用をするからという前提で、それを支える、終身雇用しやすくするという労働政策なんですね。労働力が自由な市場で流動化するという場合のリスクヘッジやセーフティネットというものは全く考えていない労働政策なのです。だから、多分社会的に人員整理はできないんですね。

ですから、小原さんは、支店を縮め、人員整理をし、ちゃんとやらないと利益は出ないじゃないかとおっしゃるけれども、多分経営者の多くの方々の腹の底には、「そんなことアウト・オブ・クエスチョンだよ」というのがどこかにあるんでしょうね。総合的に自由市場を支える制度になっていないという感じがするわけです。

 

 

 

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