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確かにサーベイランス・カントリーとプログラム・カントリーとでは作業がかなり違っていまして、通常IMFのエコノミストというのは、あまりプログラム・カントリーの仕事をやりたがりません。というのは、対象国が比較的低所得国ということもありまして、正確なデータを入手するのが困難なため、データを作っていくということから始めますので大変な作業になります。しかもミッションも長くなりますので、通常はすでにできたデータを扱って経済分析を行うといったPh.D.を活かせるような国を担当したいという方が多くて、プログラムというのはなかなか皆さんやりたくないということです。

ただ、そういったプログラム・カントリーの仕事を担当し始めて、私はやがてIMFのアプローチというのはこういうものなのかということがだんだん分かってきました。しかし、分かってくるとともにIMFのプログラムの内容そのものに対して疑問を感じるようになってきました。もちろん、IMFのアプローチすべてに対して批判するというのではなくて、一部修正する必要があるのではないかと感じておりました。また、そういったことを例えば上司の方とか、エコノミストの人とかに話したいと思っておりましたが、なかなかIMFの内部から変えていくというようなインセンティブを皆さんがお持ちではなかったのです。そこで、体制を離れて自分自身でIMFの政策なりについて考えてみたいと思いましたことがこの本を書くきっかけとなりました。

それからIMFにいる間に、IMF政策、IMF体制に対する批判というのは、たくさん聞いておりましたけれども、批判のなかにはIMFのアプローチというものを十分に理解せずに、例えばIMFの政策というのは総需要抑制政策である、イコール悪いというふうに考えている人も多くて、必ずしもIMFのアプローチを十分に分かったうえでの議論がされていないことに気が付きました。

そうしますと、せっかくその批判が有効なものであっても、同じ土壌に立っておりませんと、IMFもそうした批判をなかなか聞き入れません。今IMFは新しい国際金融状況のなかで、確かに体制の変革を迫られています。変わっていくためにはIMFのアプローチを理解したうえでの建設的な批判を受ける必要があります。そこで、私はIMF内部の人間でしたが、もし可能であるならば、IMFのアプローチというものを、私の理解に基づいて紹介するとともに、どういった点に問題があるのかということについて、その方向性を示したいと思ったというのがもう1つの本を書くきっかけです。

 

 

 

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