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ちょっと先ほど申し上げるのを忘れましたが、ハビビもそのあたりのことはよく分かっておりまして、ちょうど1ヵ月ぐらい前ですが、ハビビの側近と電話で話したときに彼が言っていたのは、これは毎日会っているハビビの側近中の側近ですけれども、その人が言っていたのは、いや最近ちょっとハビビは弱気になってきて選挙に勝てないと分かったら大統領には出ないと言い始めた。むしろ、出ない代わりに彼が誰かを指名する。それでもって、その人が大統領になることを支援することで、力を維持しようとする、そういうことを考えているよと言っていました。

これは非常に面白い動きでして、じゃあそのとき誰を支援するのかというと、いやそれは言わないけれども誰を支援しないかということは言っている。それは、メガワティとアブドラファン・ワヒットは絶対支援しないと言っている。これはますます面白い。私はますますスルタンが出てくるのかなと思っています。スルタンと例えばアクバル・タンジュンの組み合わせですね。などというのが、今のところ全然下馬評ではないのですが、意外と蓋を開けてみるとワーと出てくる。このへんになると全く分かりませんけれどもね。組み合わせの話としてはありうる。

司会者 よろしいですか。どうぞ、ほかの観点からでもどうぞ。

C OECFのCと申します。今日はありがとうございます。この営々と展開されてきたインドネシアの独立以降の長いインドネシアの政治史の中で考えた場合、今日先生がお話しされた、非常に多元化されて混沌とした現下のインドネシア政治のこれからの展望のなかで、インドネシアにとってナショナリズムというのはどう考えたらいいのでしょうか。

白石 非常にいい質問ですね。現在のところ出てきている問題というのは、ほぼすべて実は1950年代にあった問題です。例えば中央と地方の権限、それから資源分配をどうするか。これは1950年代にこれでもって地方で反乱が起こったくらいです。それからインドネシアの国是をナショナリズムにおくのかイスラムにおくのかというのも、これでもって1950年代に反乱があったんですね。ですから、そういう問題がスカルノ時代からスハルト時代を通じてほとんど40年にわたってずっと棚上げされている。

それが今、パンドラの箱が開いてもう一度戻ってきているというのが現在のインドネシアの状況で、ですからインドネシアの中ではこの結果、要するにインドネシアの人が我々は40年間無駄をしたという、実は非常な悲観論があるんですね。でも私は、必ずしもそうではないだろうと思っています。むしろこの40年間の間に何が変わったかというと、かつては圧倒的に文盲の社会だった。ところがほとんど完全に識字者の社会になった。今や90%の人が文字を読める、そういう社会になった。

 

 

 

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