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そこで私が実は一番気になっているのは、選挙の正当性の問題です。つまりアメリカ政府のスタンスは非常にはっきりしていまして、ハビビが負けたらいいのではないのというのが、一言で言うとスタンスなんですね。僕は日本政府というのは、そうではないと思うのです。むしろそのときに、どういう理論武装でもってアメリカ政府に対して反論するかという話で、私が考えるのは選挙が正当であるかないかということを判断するのはインドネシアの国民である。インドネシアの国民は自分たちが大体選挙の結果というのはこうなるであろうと、大体の目算というのはもっているのだろうと思うんです。そこからあまり大きくはずれない限り、おかしいとは言わないのではないかと思います。

それは、ですから最終的に言いますと、先ほども言いましたように4つか5つの政党が、15%から25%ぐらいの票を得て出てきて、その結果ハビビがバックするのならいいのではないかという話ではないかなと思うんですけどね。でもこれは、枠組みが狂ってもなんの意味もないですから、日本政府として理論武装しておく必要があるのではないでしょうか。そのうえで場合によれば、インフォーマル・ルールをもっとつくりなさいですとか、あるいは権限分配とか資源分配とかいうのはもう少しこういうふうにしたほうがいいですよ、といったかなり具体的なアドバイスはできるかぎりしたほうがいいと思うんです。ですからお金はもう出していますので、もう少し口も出していいのではないか、これは出し方の問題でして、公然と出すと反発しますけれども、内々で出すとインドネシアの人は全然反発しませんから。

それからもう1つは、これは日本政府そのものの対応なのですが、例えば、先ほど地方と中央の問題でいうと権限、つまり許認可権を今までは全部ジャカルタがもっていたけれど、今からは地方に移るかもしれませんよということを申し上げました。これはどういうことかといいますと、例えば、日本の商社が木材開発をやる、あるいは石油、ガスの開発をやるといったときに、今のようにジャカルタだけではできなくなるんですね。地方の政治家、あるいは地方政府とも交渉しなければならない。そうしますと、日本政府としても、地方で今本当のところ何が起こっているのか、情報収集もかねてもう少しジャカルタ中心のウォッチングの態勢から、地方にもっと目配りのできるような態勢に移し替える必要があるのではないかなと思っています。

私の知っている限りでは、今のところ外務省はまだそのような態勢をとっているようにはみえません。ちなみにアメリカ政府は始めました。スタッフの増員、それから今までは例えばスマトラのメダンには領事館がなかったのですが、領事館を再開する。これにより、アチェ、北スマトラという最も有力な輸出部門をもっている地域に対する、いわば情報収集というのを再開することになる。ですから、少し外交態勢としても対応策を考えなければいけない頃に入っていると思います。

 

 

 

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