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そこで実は、最初に申し上げた悩ましい点とつながってくる。つまりハビビが勝ったときどうなるのかいうのは、そこで問題になるのです。つまりアメリカ政府のほうはハビビになるとかなりはっきりと文句を言うと思うんですね。それに対して、日本政府のほうがどう対応するかということで、これが国際的にも一種のリパーカッションを起こします。

では長期的にはどういう問題があるか。大きく申し上げると3つぐらい大きな問題があるのではないかと思います。1つは、現在のところ選挙がリーズナブリーに、これはロスの言葉を借りますと、リーズナブリーにフェアー・アンド・フリーに行われる。そうすると、国民の政府に対する信頼が回復してうまくいけば、今のような暴力的な事件がだんだんと起こらなくなるのではないかという期待があるわけですけれども、私は多分そういう話ではないだろうと思います。

つまり、選挙が正当性をもつかもたないかに関係なく、多分これからも暴力的な事件はどんどん起こるだろう。なぜかというと、それはタイとインドネシアを比較すると一番いいのですが、同じように経済危機になって、失業者がいっぱい出て、企業がどんどん崩壊する、破産するという事態になったにもかかわらず、タイでは暴動は一切起こっていません。インドネシアでは暴動は大体週に1回は必ず起こっています。なぜこれほど差が出たのかという話ですね。私は、これは政府に対する信頼の問題ではなくて、要するに政治、あるいは人間が社会生活、政治生活を行っていくうえでしてはいけないことと、してもいいことという一種のインフォーマルな部分があると思うのです。法律として書かれている書かれていないにかかわらず、例えば権力闘争のなかでショッピングセンターに火をつけてもいいという所と、それはしてはいけないという所とがある。

例えば日本で権力闘争のときに、誰かが誰かをおとしめるためにショッピングセンターに火をつけたらこれは完全にルール違反ですね。インドネシアはしかし、それを平気でやるわけですね。スハルトは何をやったかというと、昨年の5月には戒厳令を敷くためにジャカルタであれだけの暴動を仕掛けているわけです。あんなに大きな暴動をスハルトが全部自分でやったとは思いませんが、間違いなく彼の命令で誰かが火をつけているのです。

 

 

 

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