MSAS調達問題
1993年3月にEUが、日本の民間航空機用の次世代衛星航法補強システム(MSAS)の入札で「EU企業を排除したのは世界貿易機関(WTO)の政府調達協定違反である」として日本政府をWTOに提訴していた問題である。総合評価落札方式に基づく入札の結果は米ヒューズ社と提携していたNECが技術優位性により、東芝を退けて約46億円で落札した。運輸省は増大する空の交通量に対応するために1999年に打ち上げる多目的衛星とGPS(全地球測位システム)を使用し、アジア・太平洋地域を中心に、航空機の位置を正確に把握し、飛行間隔を現在の10〜15分から5分以下まで縮める予定であり、GPSが発信する位置信号の誤差を補正し、航法精度を高めるコンピューターシステムであるMSASは2000年頃の実用化が予定されている。
世界貿易機関(WTO)
GATTに代わり、関税その他の貿易障壁を軽減し、国際貿易における差別的待遇を廃止することを目指したWTO設立協定の実施、運用を円滑とするために1995年に発効した国際機関である。ただし、航空分野に関しては、航空機の保守等、一部の付随的な業務を除き、サービスの貿易に関する一般協定の適用除外とされている。日本の次世代衛星航法補強システムの国際入札において、仕様の面で先行する米国型(WAAS)との相互運用を求める等、EU企業が事実上排除されたとして欧州委員会がWTOへ提訴したケースでは、内外無差別の原則等を定めた政府調達協定の下、先ず利害が関係する国として米国も参加した二国間協議で紛争解決を目指し、2回の協議を経て決着している。二国間協議で決着しない場合は多国間協議を経てWTOによる裁定がなされる。