それはどういうことかというと沿岸域を埋め立てて、そこに工場を建てる。その当時1バーレル2ドルとか3ドルの石油を輸入して、それを加工する。それから重油をつくって、それで発電所を興し、鉄鉱石を輸入して鉄を製産し造船を興し、そしてものを海岸から輸出していく。
要するにコストを下げてやるのですが、そういう戦略に出た。それは九州から北海道まで同じ下敷きで埋め立てを進めた。東京湾も例外ではありません。大阪湾もそうです。渥美湾も瀬戸内海も全部そうです。そういうかたちで進めていきました。
その価値観を転換をしなければならなかった一つの契機は、オイルショックのときだったという方たちもいます。ある程度ブレーキをかける。ところが人間の浅はかさで、食べるだけ食べてしまう。そのへんがちょっと間違っていた。そして今度はバブルの崩壊ということになったわけです。
質問 最後にこれだけ教えていただきたいのですが、私は静岡出身で、小さいころに楽しみにして泳いだところで、焼津の乙女浜海岸というところと、すぐ引き続いて袖師海岸というところがありました。しかし、十何年前に行きましたら、全部コンクリートのテトラポットの山になってしまっていた。あれはどういうことでつぶしてしまっているのでしょうか。
大野 海岸の造成の仕方というのは伊勢湾台風が契機です。あのときに約5千人という方が亡くなったと思いますが、かなりの被害を受けた。相当な高潮で海岸線がやられた。あれを契機に、それからあと当然建設費用が増えていきます。バブルでほかの加工業が減っても建設業は5倍に増えたというのですから……。
わが国は国土回復という発想がずっといまだに続いています。テトラポットで儲けるというと言い方が悪いですが、それを置くこと自体がコンクリートを使って、一番手っ取り早い経済効果だったのです。
質問 回復計画と言われましたが、回復というのはどういう字を書くのですか。
大野 恢か回かどちらか忘れましたが……。
質問 どういう意味ですか。
大野 元に戻すということです。だから、絶滅種があれば、その絶滅種を呼び起こそうではないかというのが、アメリカのやり方です。というのは、レイチェル・カールソンが『沈黙の春』を書いたのは、生態系がおかしくなるというので、アメリカでは環境庁ができるのですが、わが国は公害です。毒を流さないようにしようというのが、環境問題なんです。