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なお、この総経費110億ポンドはGDPの1.6%に相当する。この数字をもとに2051年までの長期ケアコストを推計したのが表28で、GDPが毎年2.25%伸びると想定した場合、今後半世紀にわたって長期ケアコストがGDPの2%を超えることはないと予想されている。ここで引き出された一つの結論は、長期ケアをめぐっての「時限爆弾」は存在しないということである。

 

表28 高齢者向けの長期ケアに要するコスト(1995/96年の価格をベースに)

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出所:Royal Commission Report(1999)

 

●長期ケアコストの公私分担のあり方

王立委員会はつぎに、この長期ケアコストをどういう形で分担するのが望ましいかを検討している。その一つの前提として、現在の医療と福祉のコスト負担のあり方の不合理さを指摘する。1948年に「国民扶助法(National Assistance Act)」が制定され、地方自治体は高齢者や障害者の社会福祉に責任を持つようになったが、この時以来NHSと社会福祉は違った原則のもとに運営されてきたという。つまり、そのほとんどを国庫負担でまかなうNHSは、全国民に公平な医療サービスを無料で提供することを原則とし、収入の多寡や居住場所に関係なく、すべての国民に等しい権利とアクセスを保障してきた。最近の民営化の影響でこの原則にやや歪みがみられたものの、政府は最近のNHS白書の中で、NHSの伝統的原則を保持することを改めて確認している。一方社会福祉のコストについては、国からの助成が自治体の福祉財源の大部分を占めるものの、地域で提供されるサービスの内容や料金設定などは、地域の民主主義と説明責任を尊重する形で実施されてきた。

この結果福祉サービスが有料となるところが増えてきているし、自治体によるサービス格差問題の原因にもなっている。NHSと社会福祉がこうした違った原則によって実践されてきたため、例えば病院に入院すると無料となるのに、痴ほう症高齢者がホームに入った場合、痴ほうが医療ケアとは認められないためにサービスは有料ということになってしまう。

王立委員会は、高齢者にとっての長期ケアはほとんどの国民が普遍的に経験するものであり、したがってそれにかかるコストは医療と同じように無料にすべきだと主張する。

 

 

 

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