日本財団 図書館


●「ケア基準委員会(Commission for Care Standards)」および「全国ケア基準委員会(National Care Standards Commission)」の設立

これまで地方自治体(レストホーム担当)および保険局(ナーシングホーム担当)によって実施されてきた入居ホームの登録および検査・監督が、独立機関として設立される「ケア基準委員会(Commissions for Care Standards)」に移管される。これによって250カ所に分散していた検査・登録の権限が、イングランド全体8カ所に設立される同委員会に集約されることになる。また、これまで登録・検査の対象から外されていた自治体運営のホームも登録が義務づけられ、さらに在宅ケア分野の業者にもこの制度が適用されるようになる。将来的には同委員会で登録業者のリストを公表して利用者の選択をしやすくし、さらに自治体が取り交わすサービス契約も登録業者のみが受託可能となる。登録・検査の基準としては、すでに入居ホームについては部屋のサイズなどについて最低基準が設定されており35)、今後は在宅ケアの分野で全国基準が用意されることになっている。

また、1999年12月に導入された「ケア基準法案(Care Standards Bill)」の中で、「全国ケア基準委員会(National Care Standards Commission)」という独立全国機関の設立が発表された36)。各地に置かれるケア基準委員会が登録・検査を担当するのに対し、この全国委員会は全国レベルでの最近の動向などをまとめ、政府に提言・アドバイスしたりする他、国民にもケアレベルの現状を明らかにする任務を担うことになると予想される。なお、この全国ケア基準委員会の位置づけなどについては、第7章でより詳しく触れている。

 

●「社会ケア協議会(General Social Care Council)」の設立

上の「ケア基準法案」によって設立されるもう一つの全国組織が、「社会ケア協議会」である。約100万人にのぼるといわれる社会ケアスタッフの質の向上を図るのがその役割で、ケアスタッフが守るべき「サービス規範(Code of Conducts)」を設定したり、有資格スタッフを登録したりする業務を担当する。この協議会の最初の仕事となるのがサービス規範の設定で、この中で利用者のプライバシーや秘密保持といった項目が規定されることになっている。規範ができれば利用者はどういうサービスを期待すればよいかをはっきり知ることができ、苦情申し立てなどの場合の一つの基準として活用できる。また、ケアスタッフの登録については当面は自治体のスタッフから始め、いずれは民間業者やNPOのケアスタッフにも広げられる見通しである。将来的には自治体とNPOとのサービス契約などで、NPO側でどれだけ登録スタッフをもっているかが契約条件の一つになるとみられている。実際のスタッフ研修を行うのはこれも新設される「対人社会サービス研修機関(Training Organisation for the Personal Social Services)」で、ここで研修戦略と研修プログラムが準備されることになっている。すでに政府は1999年度から3年間で2000万ポンド弱の研修予算をつけている37)

 

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION