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3 都市と農村の比較からみた高齢者福祉医療の実態

 

フランスの人口密度は日本の約3分の1であるが、日本のように山岳地帯の割合が高くはないために、人口は全土に分散している。市町村は大小の区別なく「コミューン」と呼ばれるが、統計上では人口2,000人未満のコミューンを「農村」と定義している。

農村部では、一般的に全国平均より高齢者人口の割合が高い。都市部に住むフランス人が退職すると、故郷や、別荘を持っていた田舎に住むケースも多いからであろう16)。農村部に居住している割合は、全年齢平均では26%であるが、65歳-79歳では31%、80歳以上では32%であった(1990年国勢調査)。

農村部の面積はフランス本土総面積の84%を占め、その中に36,500余りのコミューン(市町村)が存在する。そのうち1万余りのコミューンは200人にも満たない小さな村であり、この程度の規模になると商店が1軒もないような村がほとんどである。フランスの農村では昔に建てられた石造りの大きな家が多いのだが、高齢者の家は昔ながらの生活を続ける人が多いために、若い世代の家庭より近代化していない生活をしていることが多い。例えば、快適な水準の住居(屋内にトイレと浴室があり、セントラル・ヒーティングがあること)に住む世帯の割合は、全世帯平均では76%であるが、60歳以上の世帯では71%、75歳以上の世帯では62%である。農村部に住む高齢者世帯の中には、いまだに暖炉にマキをくべて集中暖房をしている所もある。食器洗い機の所有率も、40歳くらいの世帯主の家庭では60%であるが、60歳以上の世帯では20%に過ぎない。またフランスでは大きな町を除けば公共交通機関が発達していないために、自家用車なしの生活は極めて不便である。交通が激しくない時代に生まれた高齢者が無免許で運転できる自家用車さえ、いまだに禁止にはなっていない。車の所有率を見ると、60〜74歳の世帯では70%だが、75歳以上の世帯では35%に過ぎない(全世帯平均は76%)。また過疎地に住む高齢者にとっては、病院に通院するにも不便である。フランス人は広々とした農村に住むことを好む国民だが、高齢者にとっては農村の生活は決して便利とはいえないのである。

こうした事情を反映して、高齢者が施設(老人ホーム、長期入院など)で暮らしている割合は、農村部の方が都市部よりも高くなっている。農村に住む80歳以上の高齢者の4人に1人は高齢者施設で生活しており、これは全国平均の2倍という高率である。逆に言えば、農村部では高齢者のための居住施設(老人ホームなど)が充実している。また後期高齢になると、社会サービスが充実していて生活がしやすい都市部に移り住む者もある。80歳以上の高齢者の場合は、都市では45%が一人暮らしをしているが、農村部では一人暮らしている割合は35%である。

 

 

 

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