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第4章 フランスにおける高齢者の生活実態と福祉医療受給状況

 

1 高齢者の所得

 

1960年にはフランス人の平均退職年齢は68歳であったが、現在では大半の人々が60歳になる前に職業活動を停止している。高齢者の就業率は近年大きく減少し、現在では60歳以上の高齢者就業率は、男性は5.6%、女性は3.7%に過ぎない(1998年)。

退職者の生活レベルは1970年代から改善されるようになった。1970年と1990年を比較すると、老齢年金制度が確立したことによって、退職者の平均収入の伸び率は就業者の平均収入のそれより2倍も早い13)。高齢者最低所得保障(minimum vieillesse)14)の給付を受ける高齢者の数も、30年前から減少し続けている。1970年には退職者の20%(220万人)が高齢者最低所得保障を受けていたが、受給者の割合は1998年には9%(100万人弱)となった。この期間には退職者の数が増加しており、しかも支給された高齢者最低所得保障総額は3倍になっているにも係わらずの結果である。将来も高齢者最低所得保障の受給者はさらに減少すると見られている。

 

〔老齢年金受給額〕

フランスには、およそ1,170万人の年金生活者がいると推定されているが(1997年)、正確な年金生活者総数のデータはない。働いていた間に職業を変えたために退職後には複数の金庫から年金が支給されているケースもあるため、各金庫が把握している年金支給者の総数を合計するとだぶりが出てしまうからである。

満額年金受給に必要な年金保険加入期間を満たして年金生活を送っている人の割合は、男性が85%、女性が39%とみられている。満額年金を受給している60歳以上の退職者を対象に行われた労働・連帯省の調査(1997年)では次のような結果になっている。

年金支給額は制度によって大きな差があるが、1人当たりの平均年金受給額は1カ月8,418フランであった。しかし男女差が大きく、男性の平均年金受給額(1カ月9,333フラン)は、女性の平均(6,665フラン)より40%ほど高い。付加的な給付の支給額を含めない直接年金受給額(老齢年金保険拠出金をもとにして支給される年金)の平均受給額を見ると、男女差はより大きくなり、男性の平均(1カ月8,877フラン)は女性の平均(5.926フラン)より50%も高くなっている。

年金受給額の個人差は、女性の方が男性より大きくなっている。満額年金受給に必要な年金保険加入期間を満たしている女性のうち、10%は直接年金だけで1カ月に13,000フラン以上を受給しているが、10%は1カ月に3,000フラン未満しか受給していない(1997年)。

 

 

 

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