当世高齢事情 No.11
社会の高齢化により、従来の慣習や一人一人のものの考え方もどんどん変わってきました。特にお金が絡んでくると問題はさらに深刻。そんな当世の高齢事情をもっとも身近に見ている公証人の方に道しるべのアドバイスをお願いするシリーズ。さて、あなたはどんな生き方を選択しますか?
立ち直れなくて
回答者 清水 勇男
蒲田公証役場・公証人
Q 脳こうそくで倒れた主人を看病して六年、その主人を見送って一年たちました。子供は二人とも別に所帯を持っています。主人の父母も長患いで、ずいぶんと苦労しました。お墓に主人の遺骨を納めた後、これでやっと私も楽になれると思ったら、ドッと疲れが出てきて、何をするのも億劫になり、一日中ぼーっとしていることが多くなりました。まもなく六五歳になりますが、体にはどこといって別に悪いところもなく、そこそこの資産もありますので、質素に暮らしていけば生活に困ることもないと思っています。
ただ、こんな腑抜けたような毎日はもうたくさん。役立たずの自分なんかいっそのこともう主人のもとへ…などと思う日もあります。子供たちは、何バカなこと言ってるのよ、これからじゃないの、と怒るのですが、沈んでいくばかりの暗い私。これから先どうしたらいいものでしょうか。
A 恐らく喪失感からまだ立ち直っておられないのでしょうね。あなたは、多分、長い間の看病をつらい、苦しいとばかり思い込んでいた、しかし、実はそれが生きる張り合いでもあったのです。それが突然なくなってしまった、そこで心の中にぽっかりと空洞ができてしまったのです。お手紙によりますと、ご趣味もなく、内気で、親しい友人もおられないということですが、勇気を持って自分の閉ざされた心の空洞に風穴を開ける努力が必要です。運命という扉は、こちらが叩かない限り決して開かないものなのですよ。