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今月の私の一冊

 

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『子どもという哲学者』

ピエーロ・フェルッチ著〔泉典子訳〕

(草思社 本体定価1500円)

 

推せん・佐々邦彦さん(静岡県)

子供の目線に合わせて書いていますので、その行動は手に取るように、いじらしいほどまでによく理解できます。子供を理解することは簡単なようであって実は忍耐さえ必要とするものですね。子供の世界に入ろう、理解しようと考えれば考えるほど、純粋になるのでしょうが、大変な努力を要求されます。しかし、それこそは大人が反省しなければならないということを知り学ぶ。そのことが本当に大切であり、どこまで認め、理解することができるかが重要であると思います。

 

「エミリオがだまって食事をしている。目が遠くを見ているから、何かを考えているのがわかる。ぼくは邪魔したくないから何も言わない。と、ふいにエミリオが、スプーンの手を休めてぼくのほうを向きながら言う。『パパ、何もかも夢だったらどうなるの?』その年ごろの子どもが哲学者になりやすいのは知っていても、それでもやっぱり驚いてしまう。そうだね、とぼくはこたえる。ある朝目が覚めたら、パパもママも友達も、おもちゃや家まで消えちゃってるとか。おまえはベットで、何もかも夢だったのかと思うわけだよね。エミリオは『うん』と言いながら、また食べはじめる。『でもベッドも夢かもよ』」(本書「子育ては自分に出会う旅」より抜粋)

 

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