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今月の私の一冊

 

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『人間らしい死をもとめて』

生井久美子著

(岩波書店 本体定価2200円)

 

日本では8割の人が病院で「死」を迎えるという。チューブに囲まれ身体を縛り付けられて最期の時を過ごす人も少なくない。こうした日本の現状を踏まえて、著者は「死」の問題に早くから取り組んできたイギリス、ドイツ、デンマーク、オランダを訪ねホスピス、在宅死制度、安楽死の実状や問題点を探った。本人、家族、周囲にとって満足のいく死とは…。「死」を考えることは「生」を考えることだという主張には説得力がある。(編集部)

 

「ドイツのホスピスでチューブで栄養をとりながらいのちをながらえている女性がいた、本人に意識はないが、娘は、母親に何としても生きていてほしいと願っていた。私だったらどうするだろうか。私も母にどんな姿でもいいから生きていてほしいと思う。では、母の自然に死にたい、という今の意思はどうなるのか。頭では、本人の意思が大切だとわかっていながら、自分のこととなると、きっとおろおろするに違いない。大切な人とは、きちんと語り合っておきたい。いざというときにはやはり惑うかもしれないが、それまでの話し合いは、ひとつの支えになるはずだ。」

(本書「終章にかえて」より抜粋)

 

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