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近所の人から「年寄りの一人暮らしは、いつ何があるかわからない」「火事でも出されたら大変」ということで連絡があったのだという。Nさんは、近所の人たちに迷惑をかけてはいけないと思い、老人ホームに入ることを決めたが、周りの人たちは、年寄りが一人で生活することを許してはくれないのだと今でも不満に思っている。

特養ホームでの生活は、いつでも寮母がいるので何かと安心だが、ボケた人や寝たきりの人が多く退屈だとNさんは言う。生活は管理され、言うとおりにしていれば何もしなくてもいいが、自分の生き方まで失ってしまう気がするとも言う。人間は、苦しみも楽しみもない生活だと後ろばかり振り返るようになる。今は、振り返りの人生だという。でも、Nさんは、午前中は編み物、午後はクラブ活動に参加したり定期購読している雑誌を読んだり、ボランティアと話をしたり、編み物をしたりと自分なりの日課を立てて生活し、活動的な生活をしているように感じられる。

多少の障害を持つ高齢者のための生活支援システムがあり、周りの人たちが見守り、いざという時に助けようという気持ちがあれば、Nさんは、特養ホームではなく自分の家でもう少し自分らしく生活できたのにと思う。

 

 

 

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