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介護保険の実施延期や制度手直しを要求する人たちは口をそろえて「保険あって介護なし」とか「保険あってサービスなし」と叫んでいます。

 

「保険あってサービスなし」と言うならばそれは当然のことです。介護サービスが足りないからこそ介護保険をつくり、来年四月にスタートすることになったのです。たとえば、ゴールドプランがはじまる時点でホームヘルパーは全国で三万人でしたが、一〇年でこれを三倍の一〇万人にする計画だったんです。ところが、それでも足りないから、ゴールドプランの途中で、一七万人にかさ上げしました。そして去年の補正予算で一七万八○○○人になりました。

デンマーク、スウェーデン並みの福祉にするには七、八○万人のヘルパーが必要だといわれていますが今までのようなやり方では何年かかるかわかりません。国家財政が厳しく、福祉の予算を組むこと自体が困難だから、いつまでたっても高齢化に福祉サービスが追いつかない。社会保険制度にすれば、今までのように国の予算、県の予算、市町村の予算を付けて、ホームヘルパーを計画的に増やすということをやらなくてもよい。保険からお金が下りてくるならば、自分たちでホームヘルプ事業をやろうという人が、どんどん出てくる。現に神奈川県ではホームヘルプ事業の一割は生活クラブ生協がやっている。農村に行くと農協が取り組みはじめています。

 

言ってみれば日ソ連型の計画経済から保険システムを活用する市場経済へと発想を転換するのですね。

 

介護保険には営利目的の事業者も参入するが、NPOの人たちの活動も活発になる。ここに将来の地域発展の芽や新しい産業分野の可能性があるわけです。

 

 

 

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