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私は、高齢化の進行が止まるまでの三、四〇年間に採る特別な対策として、国有財産の大幅な売却による財政資金の投入を主張しているのであるが、それはさておき、経済戦略会議は、非常に重要な対応策をすっかり忘れてしまっていると思う。

それは、NPOである。

いつか、連合の川嶋昭宣さん(総合組織局 市民・ボランティア局局長)が私に言った「NPOは社会的弱者を強者にする」という言葉に、私はしびれてしまった。まさに、そうなのである。

ボランティア団体を含むNPOは、民間企業や行政では満たすことのできない社会の需要に応じて、さまざまなサービスを提供する。福祉の分野に属するとされるふれあいボランティアにせよ、環境、国際、教育、まちづくり等々の分野におけるNPOの活動にせよ、やっていることは、人々が求めてはいるけれど企業も行政もやらない活動である。それらは、人々が、より人間的に生きたいと望むにつれ求められるようになった活動であり、これからもその需要はどんどん高まっていくに違いない。

二一世紀の人類社会が、その幸せのためにますますNPO活動を求めるとなれば、その活動を、税金や、民間の寄付金でこれを支えることが、人々の願いにかなうこととなる。

そして、この分野の活動は、経済競争の分野における一律的な効率性になじまないさまざまな人の参加を得て、それぞれの人々が持つさまざまな能力(経済競争の中では生かされない能力)をすべて生かすことができる多様性を持っている。

経済社会における自由競争は、よりよい社会を築くために不可欠ではあるが、そのすべてではない。大切なのは、すべての人の個性を生かし、すべての人が生きがいを持って生きることのできる社会をつくることである。そのために、NPOが果たす役割は、時代が進むにつれ、ますます大きくなっていく。そのようにして、人類は、より心豊かな社会を築いていくのであろう。

 

 

 

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