日本財団 図書館


普段着の 近隣型助け合い講座 No.3

「わかるふくしネットワーク」 主宰

木原孝久

 

「助けられ上手」さんの存在で、助け合いの輪!

 

「助け合い」というのは本当はなかなかむずかしいのだとよく言われます。しかしその近隣に一人でも「助けられ上手さん」がいると、意外にその助け合いがはじまるのも事実なのです。埼玉県春日部市の高畑富美子さん(『さぁ、言おう』94年3月号でもご紹介)が痴呆の母を引き取ったのは今から十年ほども前ですが、そこで彼女は見事な「助けられ上手さん」役を演じたのです。

ホームヘルパーの体験もあり、「母一人ぐらいなら…」と気軽に引き取ったものの「その日から私の就寝は午前零時過ぎ。私の介護の仕方に問題があるのかと思っていた」ら、ある書物に「痴呆症の人の自宅介護には二、三人の人手が必要」とあって納得。むろんデイサービスやホームヘルプなどの助けは得てはいますが、それでは足りない。ところが母と一緒に道を歩いていると、電柱の陰などに隠れて薄気味悪そうな顔をしている。「痴呆についてこんな理解のされ方では、とても協力は得られない」と悟ってから、機会あるたびに近所の人に病気の説明をしたり、わざと母と一緒に外出するようにしたといいます。

あるとき母は高校生の息子を捕まえては花札をやりだした。「これだ!」と早速、友人に協力を求め、以降毎日曜日「花札ボランティア」に通ってくれました。母は今度はぞうきん縫いをはじめる。これをしている間だけはかなり安定している。そこで近所の人たちに「古いおむつをください!」。その間も症状は進行していく。ただのおむつでは手を動かさなくなる。またまた近所の人たちに、おむつにペンで線を引いてもらうことにしました。母はその線に沿って縫うことができるのです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION