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今月の私の一冊

 

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『病院近くのわが家』

岩井啓子著

(朝日ソノラマ 本体定価1600円)

 

推せん・小嶋英雄さん

 

子どもが難病にかかったとき、親はどんなことをしても、何年かかっても治してやりたいと思うだろう。地方から子どもの治療のために上京、長期滞在を余儀なくされた国立がんセンター中央病院6A病棟の母親たちが、治療中の滞在施設『ファミリーハウス』を作ろうと立ち上がった。この運動が全国に広がって7か所のファミリーハウスができたという。本書はその運動のルポルタージュ。綿密な取材によって運動を追い続けた著者は本書の発行を待たずに心臓病のため50歳で夭折したという。(編集部)

 

「6A病棟の母親たちは、病院の談話室や、面会時間後の喫茶店で、そういう闘病生活の悩みを話し合っていた。

そんな母親たちに希望を与えてくれたのは、週2回、病棟を訪れて母親たちの話相手にもなっていたボランティアのキャスリン・ライリーさんだった。自分たちの悩みを解決してくれるような付き添い家族のための滞在施設が、アメリカには実際にあるというのだ。「アメリカでは、大きな病院の近くにたいていマクドナルドハウスというものがあって、病気の子どもやその兄妹が一緒に遊んだり、宿泊しているお母さんたちも励ましあっています。費用も安く、料理もできる家庭的な雰囲気の施設で、みんなが集まれる広い場所もあるんですよ」

−東京にもそういう家があれば、どんなにいいだろう。宿泊だけでなく、子どもの病状、将来への不安など、同じ心配ごとを抱える母親同士が情報を交換したり、悩みを語りあう場としても使えるのではないか……。

母親たちの心の中に、マクドナルドハウスのような滞在施設を作りたいという夢が芽生え始めた。」

(本書 序章「それは6A病棟から始まった−難病の子どもの母親たちが上げた声」より抜粋)

 

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