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表紙絵から

池田げんえい/1946年神奈川県生まれ。日本児童出版家連盟名会員。創作『鬼の会』同人。日本デザイナー学院講師。はり絵作家。

 

平成・東海道五拾三次 その50「土山」

 

―峠越え―

坂下宿の外れの小滝を登り、ロープにしがみつき、自分の体重と格闘しつつ山中に入る。眼下に細く1号線の杉林を縫うようにクネクネ道が続き片山神社に到着。近くに「鏡肌」があり、山賊が峠を越える旅人の姿をその大岩に写して襲ったとか。それを見に行かぬ手はないと、さらに杉林に分け入る。スギ花粉のモヤを抜けるとそこには黒くニブくヒッソリと「鏡肌」があぐらをかいていた。そして、どこからそうなったのかいつの間にやら「東海自然歩道」の標示、確実に道は平坦になりはじめる。すると目前に巨大な「万人講常夜燈」がデンと姿をあらわした。昔の行商人や信者の道中安全燈だ、もう土山宿だ。山賊を退治した坂上田村麻呂を祭る田村神社まで、さぁもう少し!のはずだった。ところがこの道程が長かった。平坦な道ってホントに疲れますね。一人納得。

 

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田村神社

 

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「土山」の現景

 

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安藤広重絵「土山(春之雨)」

馬子歌にもうたわれるほど有名な土山の雨。水かさが増し勢いづいた川を渡る行列は、参勤交代で江戸から国元へ戻る一行だろうか…。春の雨は細かく体の髄までもぬらすようだ。

 

 

 

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