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市民の会は、毎月一回、ゲストスピーカーを招いて定例会を開いている。テーマは近隣地域が主催した介護シンポジウムの報告、市の福祉担当課長による介護保険の進捗状況の説明、海外の福祉事情の視察レポート、NPOと介護保険とのかかわりなどだ。昨夏には福祉自治体ユニットの幹事のひとり、東松山市の坂本祐之輔市長を招いて、まちづくりと福祉とのかかわりを話してもらった。

「この会で大事にしたいと思っているのは、概念だけでモノを言うのではなく、ヘルパーやケアマネージャー、行政の担当者など現場で介護に携わっている人たちの声を聞くことです。現在、タテ割りで機能しているそれぞれの専門職の横のつながりを強めるパイプ役になりたい」と渡邊ヒロコさんは話す。

会の発足から二年目の今年度は、行政に対しては、介護保険事業の策定委員会にメンバーの参画を再度要請し、策定懇話会の傍聴や公聴会の開催を通して一般市民の声を介護保険事業計画に反映させるよう働きかける。

「それと、行政と仲良くなることも大事」と渡邊さん。足繁く越谷市の担当者を訪ねて、市民の会の要望を伝えてきた渡邊さんは、行政の対応がだんだん変わってきているのを感じる。「まず顔を覚えてもらう。そうすると話を聞いてもらえるようになります」。そのひとつの成果が、二月二五日の策定懇話会の傍聴ができたことだ。

「市と市民が一緒になって汗を流さなくては、本当に市民のためになる介護保険にはなりません。われわれも含めて、市民がこんなに真剣に取り組んだことは今までなかった」と、代表の長澤さん。市民の小さな波が重なり合って、「1万人」のビッグウェーブになっていく。

なお、1万人市民委員会は九九年九月までの時限組織として活動しており、九月には解散集会を開いて三年間の活動を総括する。十月からは要介護認定作業が始まるなど介護保険事業がいよいよ動き始める今後に向けて、同会の地方組織が福祉自治体づくりの中心となって活動を進めていくよう本部では期待している。その意味でも、近隣の地方組織が手をつないで活動の輪を広げた長澤さんたちの試みは注目される。

 

 

 

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