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1] すべての客船と、1600総屯以上の貨物船に対してはモールス電信システム

このシステムの運用にはモールス能力が基本的なことであり、モールス通信の資格をもつ無線通信士が無線電信装置を搭載する全ての船舶に必要である。

2] すべての客船と、300総屯以上の貨物船に対しては2182kHzと156.8MHzの無線電話装置

しかし、この現在までのシステムには次のような限界と欠点があった。

(1) 遠距離に届かないので、あらゆる状況において、他船や陸上局へ確実に遭難通報を通達することは不可能である。

(2) 遭難通信は手動の通信操作で遭難通報を送信することに頼っているので、突然の遭難に対してはこの方法は有効な遭難通報として十分に確実な手段とはいえない。

(3) 現在の救難システムでは船や陸上局における人間の聴覚による監視が基本となっているので、その聴守の効果は、遭難通報の信頼性という点で現在のシステムの限界を与えている。

(4) 多くの船が遠距離通信の目的で短波無線装置を備えているが、この装置を搭載することについて、国際的な要求もないしHF周波数帯の聴守義務も要求されていない。それゆえに、HFによる通信も遭難と安全の目的には十分信頼性があるとは言い難い。

 

1・3・2 新しいシステムの計画

海事通信衛星の導入は、CCIRによるデジタル選択呼出システム(Digital Selective Calling : DSC)や、船に対する航行警報・気象警報その他の緊急情報の放送を受信するための自動直接印刷システムの開発と相俟って、基本的には船から陸上局への通信が新しいシステムの基礎となった。これらの技術の利用を考えて、新しいシステム即ちGMDSSの詳細な計画が1979年より開始された。

詳細な計画は、決定される時点で実際に利用できるであろう通信手段、運用方法、運用手順、そして陸上施設のうち最も適切なものを一体化して総合的なシステムを提供するように考えられた。その上、現在の装置の償却のためと、GMDSSの装置を搭載していない船にも安全サービスを維持するため、現状のシステムがGMDSS決定の時期まで並行的に使用されて行くように留意している。この時期を過ぎてからは、GMDSSだけが国際的な基盤の上で責任を持つこととなる。

この計画は、他の国際的機関と協力して行なわれてきたが、特にITUとは、その「1983年移動体業務に関する世界無線通信主管庁会議」でGMDSSの使用周波数割当を行う等密接な協力を保った。

 

 

 

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