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結晶に電界が加えられている場合には、電子は電界とは逆方向に移動するから、ホールは電子とは逆に電界の方向へ移動することになる。(+)の電荷を持ったホールが移動するのであるから、これに伴い電流も生じることになり、これを正孔電流と呼んでいる。

 

2・1・4 N形半導体とP形半導体

Ge結晶を作るときに、不純物として価電子を5個もった物質、例えば砒(ひ)素Asを添加するとGe原子の来るべき位置にAsの原子が図2・4のように入りこむ。このとき5個の価電子のうち4個は周囲のGe原子と共有されるが、残る1個の電子には共有される相手がない。このような電子は、外部からの熱や光などのエネルギの刺激により、容易にAsから離れて結晶中に飛び出してゆき、この電子が電気伝導を生ずる自由電子となる。すなわちごくわずかのAsを加えることによって電流が流れやすい状態になる。このような結晶の電気伝導は(-)の電荷(Negative charge)を持った電子によって生じるのでこの結晶をN形半導体という。結晶をN形にする不純物をドナーといい、燐(りん)、砒(ひ)素、アンチモンなどの5個の価電子をもった原子からなる物質が用いられる。

 

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図2・4 N形ゲルマニウムの結晶構造

 

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図2・5 P形ゲルマニウムの結晶構造

 

一方、3個の価電子を持つ物質、例えばインジュウムInを不純物として添加した場合の結晶は図2・5のようになる。すなわち3個の価電子を持つ不純物原子は周囲の4個のGe原子と完全な結合ができず、したがってこの不純物原子の回りには初めからホールが1個あることになる。

 

 

 

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