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実用面では空中線を回転させるので、導波管も回転させる必要があり、このため、回転部分には円形導波管を使用している。そして、この回転する円形導波管と固定の導波管との変換部分には、ロータリージョイント(図4・18参照)と呼ばれるものを使用している。

 

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図4・18 導波管回路のロータリージョイント

 

空中線は、そのほとんどが可逆の定理を適用できるので、同一周波数に対しては送受信とも同じ能率で使用できる。また、レーダー空中線の重要な特性の一つに、指向性とサイドローブレベルとがある。

指向性は方位分解能を決定し、サイドローブレベルが大きいと偽像を生ずることになる。指向性を作りだすためには、ダイポール空中線を配列したものや光学系のように反射板を使用したものがあるが、このうちのダイポール空中線を配列したものの一つであるスロットアレイ空中線が現在では航海用レーダーに最も広く用いられている。

 

4・4・1 スロットアレイ空中線

導波管の一側面に一定の間隔をおいてスロットを斜めに切り込んで、そこから電波を発射させるが、1個のスロットから発射される電磁エネルギーは少量なので図4・20のようにスロットを多数設け、スロットの傾斜角を変えて鋭い指向性を作り出している。このため、これをスロットアレイと呼んでいる。スロットアレイには、方形導波管の狭い面(H面)にスロットを切ったものと、広い面(E面)にスロットを切ったものとがあるが、前者が水平偏波、後者が垂直偏波の空中線となる。

図4・19(a)において、導波管内壁の電流分布は点線で示す通りであり、スロットが斜めに切り込まれていると、この電流分布をスロットで切るためそのギャップに生じた電界により電磁波が発射される。また、この角度θが大きいほど発射される電磁波は大きくなり、逆にθ=0で発射は零となる。発射される電界Es は、水平方向の電界EHと垂直方向の電界Evとから成っている。いま、隣接したスロットの間隔をλg/2とし、各スロットを逆の傾きで切っておくと垂直成分Ev は互いに打ち消し合い、水平成分EHのみが相加わって水平偏波の空中線となる。〔図4・19(b)参照

 

 

 

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